イリヤの空、UFOの夏4 3/3

イリヤの空、UFOの夏4 3/3





お守りのつもりだったんだと思うわ。



あ・・・



どこに行くにも、何をするにも
肌身離さず持ち歩いていたから。

あのね、もちろん加奈ちゃんが悪いんだけど
怒らないで欲しいの。
加奈ちゃんにとってのお守りって言うのは
本当に生きるか死ぬかの・・・



伊里野は・・・
伊里野は、あのブラックマンタの
パイロットなんですか?

手首に金属の玉が埋め込まれているのも
すぐに鼻血出すのも
いきなり髪の毛が真っ白になったのも
目が見えなくなったのも

全部、伊里野がブラックマンタのパイロット
だからなんですか?
誰も知らないところで
伊里野が敵と戦っているからなんですか?

そんなの大人がやれよ!
あんたらが勝手に始めた戦争だろ!
なんでそんなもんに
伊里野が駆りだされなくちゃならないんだよ!

なんで伊里野だけがこんな・・・
胸に注射つったてて
血まみれで転がってならなくちゃならないんだよ!



そうね。
浅羽君、あのね・・・

ぶっ殺すぞ!このクソガキが!



何も知らないくせに
好き放題ぬかしてくれたわね。
自分だけが
加奈ちゃんの理解者みたいな顔して。

だいたいさ、あんたが加奈ちゃんの
何を知ってるって言うのよ。
何も知らない奴の
善意なんてただの
無責任よ!

野良猫に餌をやる程度の覚悟しか
無いくせに。



うわ!

う・・・



あ・・・



ぁ・・・



加奈ちゃんを保健室まで運ぶわよ。



納得なんかしないからな。






ぅわ・・・



え?

この時計。
キーボードのマウス。
本棚の縫いぐるみ。

部長の暗号だ!

部長・・・

伊里野?

え?なんで?



明かりがついてたから。



あ、あのさ・・・



ごめんなさい。



え?
あの、何が?



今まで・・・無かった・・・
一度も・・・
お守り・・・なんて・・・
欲しく・・・なかった・・・



ぁ・・・



ねぇ、伊里野。
もうすぐ部長が帰ってくるんだ。
部長ならきっと何とかしてくれるよ。

部長は何でも出来るんだ。
きっと、伊里野の事も・・・

あ!



もしもし?



やはりそこに居たか!



え?部長?部長なんですか?
今どこに?



電話ボックス



って、どこの?
こっちは大変だったんですよ。



あぁ、こっちも大変だよ。
ついに見たんだ!
あれは生物なんだ!



え?



ばみたいにでかくて、しかも生きてた!
浅羽特派員!あれは生き物なんだ!



部長?



園原電波新聞部は弾圧に屈しない!
報道の自由は我々の・・・



あ・・・



伊里野。



あ?



こんな事、もう二度と聞かないからさ。
今すぐ基地に帰りたい?
それとも僕に助けて欲しい?



浅羽。



逃げてやる。
今日から伊里野は基地に帰らない。
伊里野が自分から帰りたいと思うまで帰らない。



駄目。
すぐ捕まっちゃう。



大丈夫だよ。
僕がついているから。



駄目!



どうして?



浅羽に虫がいるから。



え?



電池虫と電波虫。
トランスポンダーチップのバイオインプラント
だから
捕まる。






椎名は・・・



無理ですね、もう。






浅羽、痛い?



大丈夫。
平気。
平気。