イリヤの空、UFOの夏6(最終話) 2/3

イリヤの空、UFOの夏6(最終話) 2/3




あ、2年4組の浅羽直之君
その、なんだ・・・
今、電話が入っているわけだ。
自衛軍のヘリコプターから。

お!
なんだ、あんたら・・・
なんだ?一体?おい・・・
やめなさい!



陸上自衛軍情報戦四課の萩山だ。
2年4組出席番号1番の浅羽直之君。
緊急事態につき
きみの協力が是非とも必要になった。
今、迎えがそちらに行く。



浅羽・・・



行ってくる。






浅羽!
絶対帰って来いよ!



早く乗って!
時間が無いの!



は、はい。



先坂絵里です!
はじめまして・・・かなぁ?
学園祭の時、病気とか怪我とかした?



はぁ?



空飛ぶの初めて?



あ、そうです。



なら、無理してでも眠っちゃったほうが絶対楽だよ。
睡眠薬あるから。



そんなに遠くまで行くんですか?



到着予定時刻は最低でも6時間後。
目的地はまだ内緒。



そこに・・・



え?



その目的地に・・・
伊里野が居るんですか?



・・・たぶん。






あれが・・・



空母、タイコンデロガ。






すまんな。
遠い所をわざわざ。



大変だったみたいだね。



なぁに、これからの大変に比べたら
今までの大変なんざ、軽いもんよ。






あの・・・



伊里野が出撃を拒否した。



え?



この土壇場になって
もう、戦うのは嫌だと言い出した。
俺たちじゃぁ、もう手がつけられん。
最悪、自殺の可能性もある。



だって・・・
どうして?
もう、戦争は終わったんでしょ?



誰に聞いた?
そんな話。



だって、テレビで・・・

ぁ!

伊里野は?
伊里野はどこに居るんですか?



だから今、案内している。
もうすぐだ。



え?



伊里野、浅羽が来たぞ。
なぁ、つまらん事はやめて
俺とおまえと浅羽の三人だけで
話をしないか?

正直、身の安全は保障できん。
ベストは尽くすが
完全に向こうへ行っちまったら
もし、万が一のことがあっても
守ってやれんと思う。






伊里野!

伊里野!
伊里野!

伊里野・・・
ねぇ、伊里野。

わかる?
僕は誰?



浅羽。



伊里野。



浅羽がどうして?

どうして・・・
どうして今まで戻ってきてくれなかったの?

どうして・・・
あたしを置いて行っちゃったの?
あたしの事なんかもう嫌いになったの?

嫌いに・・・なったから・・・
嫌いになったから・・・すてて・・・
行っちゃったの?

夜、真っ暗で・・・
本当に真っ暗で・・・怖かった。
怖かったのに・・・
戻ってきてくれると思ったのに・・・
ずーっと、ずーっと待ってたのに・・・

暗くて・・・怖くて・・・
浅羽は、もう私のこと・・・
嫌いになっちゃったと・・・思って・・・

怖くて・・・つらくて・・・
どんどん真っ暗になって・・・
真っ暗・・・



ねぇ、伊里野。
ひどい事 言ってごめん。
本気じゃなかったんだ。

伊里野に何もしてやれない事が
悔しくて、自分に腹が立って
どうしょうもなくなって・・・
あんな事、言っちゃったんだ。

だけど・・・本当は・・・



ぅ!
ぁ!

うわぁー!

かかって来い!
僕が説得すると思ってたんなら
おあいにく様だ!

伊里野には出撃なんかさせないからな!



あさ・・・ば・・・



伊里野は絶対に死なせない!
伊里野が生きるためなら
人類でも何でも滅べばいいんだ!

伊里野。
僕は伊里野のことが好きだ。
ずっと伊里野のことが好きだった。

毎日、毎日
伊里野のことばかり考えていた。
伊里野が学校に来ない日は
伊里野の居ない机ばかり見ていた。

伊里野が学校に来た日は
それだけで幸せだった。
初めて夜のプールであった日からずっと・・・
今日まで、ずっと・・・
僕は伊里野のことが好きだった。

これからもずっと好きだ。

浅羽直之は、伊里野加奈のことが大好きだ!



やっと、わかった。
浅羽のこと。
だから、もういい。
大丈夫。平気。



伊里野?



私も他の人なんか知らない。
みんな死んじゃっても知らない。
私も浅羽だけ守る。
私も浅羽のためだけに戦って
浅羽のためだけに死ぬ。

私も・・・浅羽だけでいい。



ぁ・・・

う・・・

伊里野!



最後の背中の一押し、ご苦労。
いやぁ〜、俺もこんなにうまくいくとは
思っていなかった。
おまえ、世界中から勲章もらえるぞ。