ツバサ・クロニクル 21 2/3




これは生きていないもの。



う!



ぁ・・・



生き物の気配じゃないのに
追いかけてくる!



何、やってんだ?!



ぁ・・・!



あ!



もうちょっとであいつに
殺られるとこだったんだぞ!
なんでこんな事、してたんだ?



ぁ!






剣の練習中だったのか?
すまん。
邪魔しちまったな。



あのままだったら
きっとあの鬼児に殺られてた。

そう言えば、きみも剣なんだな。



う!



ぁ?



きみ・・・
なんて呼ばれたらゾワゾワするっつーの!
名前で呼べよ。
この間、名乗ったろ?
ちゃんと。



ぁ・・・



まさか・・・
覚えてないんじゃねぇだろうな?



ぁ・・・
龍王



おう!



龍王も剣で戦うんだな。



こいつが一番!
戦ってるって実感できるんだよ。



譲刃(ゆずりは)みたいな銃や
蘇摩や草薙みたいな特殊な武器もいいけど
おれは倒した相手の強さを
剣を通じてこの手に感じたいんだ。

おれはな、
まだおれの知らない強さに
出会えるのが
すっげぇ嬉しいんだよ!

おれは、そいつと戦うために強くなる。
もし、そいつを倒しても
まだまだもっと強い奴がいる。

それを目指して走っていけば
おれは、もっともっと強くなれる!



おれもだよ。



ぇ?



おれが目指しているのは
不思議な事や、知らない何かに出会う事だ。

もしも、今まで知らなかった物を見つけたとしても
まだまだ見たことも、聞いたことも無い
不思議なものがたくさんある。

少しずつでもそれを知ることができるのが
すごく嬉しいんだ。
それと、もう一つ
取り戻したい物があるんだ。



ぁ・・・?



絶対やると自分で決めた。
だから、強くなりたい。



おまえ!
ますます気に入った!

あきらめんなよ!



うん。






さくら、いい顔!



小狼くんが帰ってきたら
美味しいもの、出してあげようね。



うん!






人通りが少なくなったみたいだ。



鬼児が一般人を襲うようになったからな。
みんな警戒してるんだろう。



じゃぁ、おれはここで。



ちょっと待てよ。



ん?



おまえに見せたいものがあるんだ。

おれと一緒に来ないか?



ん?






白詰草



あの姫に店を任せてきたが
大丈夫なのかよ?



しっかり特訓したからね。
もう、一人前だよ。






時の向こう
風の街へ
ねぇ、連れて行って
白い花の夢
かなえて

時の向こう
風の街へ
ねぇ、連れて行って
白い花の夢
かなえて



綺麗な歌だね。



どこかへ行きたいなら
自分で行きゃぁいいだろ?



ん?



他人に頼まずに。



黒たんならそうだろうね。
でも・・・
オレはずっと待ってたからな。
連れてってくれる誰かを。

なーんて事言ったら
この間みたいに、また嫌われちゃうね。



甘い指で
この手を取り
ねぇ、遠い道を

導いて欲しいの
あなたの傍へ

その歌声さえない昼下がり
目覚めて二人は一つになり



あ〜
黒わんこ
モコナも抱っこして。



幸せの意味を
初めて知るでしょう。



さぁ、小狼くんが帰って来るまで
もうひと頑張りしなきゃ!



連れて行って。






まだ着かないのかい?



もうちょっとだ!



見せたい物って何なんだい?



それは見てのお楽しみだぜ。



でも、そろそろ帰らないと。



店の近所だから大丈夫だって。
さ、こっち、こっち。



ぁ・・・






終わったぞ。
新種の鬼児の話を聞かせろ。



兄ちゃん、せっかちやなぁ。

だそうですよ。
織葉(おるは)さん。



新種の鬼児と会ったってぇのは・・・



私よ。



歌、素敵でした。



ありがと。



いつもここで歌ってらっしゃるんですか?



えぇ。
私の店だから。

おごってくださる?
そうしたら教えてあげる。
私が会った新種の鬼児の話。



桜都国の鬼児は
鬼児狩りが誤って一般市民を傷つけてしまわないように
みんな異形なの。



ぁ?



それで?



でもね・・・
あの鬼児は人の形をしていたのよ。

それはそれは
美しい男の子だったわ。



待てよ。



なぁに?



新種の鬼児ってやつは人の姿をしていたんだろ?



えぇ、そうよ。



なのになぜ
そいつが鬼児だとわかったんだ?