×××Holic 20 1/3

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第二十話。
「アガナイ」




出来た。



ん?



完成ね!



ヤッホーイ!



わーい!
わーい!



まだチョコ湯煎できただけっす!



ふふふふふ。



そこ!
つまみ食いするな!



チッ。



もうちょっと待てっつーの。
この黒饅頭!
これじゃぁ、いつまで経っても出来ねぇだろ。



そこだ!



ふ。



ったく。
なんでおれがチョコレートケーキ作らなきゃならないんすか?



だって明日は2月14日よ。
バレンタインデーよ!
バレンタインと言えばチョコじゃない!



そりゃそうですけど
普通手作りチョコ作るのは
女の人でしょ?



普通って何?
大多数と一緒って事?
それって何の意味があるの?

誰にも迷惑かけないなら
世間様の言う所の普通じゃないって選択に
問題なんて無いわ。



何度も言うようですけど・・・
迷惑かけないならね!

もう夜遅いって言うのに
突然作れって言いだして
それも、フォンダンショコラ

この寒空に走って材料買ってきたおれには
迷惑かかって無いっつーんすか?!



あはははは。



ははははは。
わはははは。



笑って誤魔化すな!



怒った!
四月一日が怒った!



でも、そうですよね!
男からあげてもいいんすよね!
バレンタイン!

だったら、これ
明日、ひまわりちゃんに・・・



ごめんください。



お客さんですかね?

はーい!






あの、どういうご用件で?



ここに来れば何とかしてくれるって聞いたんです!



え!
え?



お願いします!



あ、あの・・・



願いをかなえてくれるんですよね?



いや、違うんです!
あ・・・
違わないんですけど・・・
違うっつーか・・・



お願いします!
お支払い出来るものなら、払いますから!



や、だから・・・



違うのよ。



ぁ・・・



願いをかなえる店の店主は
あたしよ。






あの・・・
あたし・・・
あなたの事は・・・



わたしの事を誰から聞いたかは問題じゃないわ。
あなたはこの店に入ってこられた。
つまり、あなたはこの店が必要だという事。



じゃ、何とかしていただけるのですね?



対価が必要だけれど。



それも聞きました。
何をお支払いすればいいんですか?



それを決める前に
まず、何をして欲しいのか
話してもらえるかしら?



なんだ?



これを?



駄目なんです。
お寺や神社にも行ったし
霊能師だって人にも見てもらったのに
駄目なんです。



これは、何かやばい物なのか?



わかったわ。
預かりましょう。
ただし、最終的にどうしたいのかは
あなたが決めなければならないわ。






うん。
美味しい!
やっぱり四月一日は料理上手ね。



どうも。



なに?
えらくひいてるわね?



いや、だって・・・
何かやばそうなんですもの。



そうね。
確かに珍しいものではあるわね。



え!
侑子さんが珍しいつーなんて
どれだけやばい物なんですか?!



開けていいんすか?
その紐、封印か何かじゃ?!



違うわよ。
これはただの紐。
気休めにあの人が巻いたんでしょ。



うわぁーー!
え?
て・・・



これ?



そう。



これ。



無茶苦茶普通の写真なんすけど。



そう思う?



え?
だって別に何も妙なものは映ってないし・・・



その割には
おびえまくってたじゃない?
ねー。



ねー。



封筒に入ってたときは、なんかこう
背筋がぞぞってなってたんですよ!
ひょっとして封筒のほうですか?!
やばいのは!



いひー。
ぷぷ・・・ぷ。



うわぁー!



どう?



なんともないっす。



でしょ?



って事は・・・






ふーん。

じゃぁ、その写真が?



らしいんだけど
でも、本当に普通の写真なんだよ。
こう、後姿の女の人が映っているだけの。



不思議ね。



ま、でも何も無いならそれで良いんだけどね。



その写真、侑子さんの店にあるの?



うん。

居間に写真たてに入れて。
そのまま何も無いと良いんだけど・・・。



って、こらぁ!
人のコーヒー飲むな!



荷物、いっぱいだね。
バレンタインのチョコ?



らしいな。



百目鬼君、人気あるもんね。



うーん。
おのれ!
百目鬼の分際で!



何やってんだ?



四月一日君が
フォンダンショコラ作ってきてくれたの。
中のチョコレートが温かいんだよ!