ツバサ・クロニクル 10 2/3

ツバサ・クロニクル 10 2/3



おまえ、蹴り技を使うようだが
傷を負った足をかばって
おれ様に勝てるはずがないだろ?



かばったりしない。



ん。
なんだと?



どこを怪我していようが、関係ない。
やると決めた事はやる。



うわぁー!

あぐ。



それだけだ。






ふふふ。



ぁ!



なかなかの策士だな。



俺は雨が嫌いなんだよ。
だから
さっさと止めろ!
てやぁ!






おぅ!
まさか・・・
あの秘妖(キイシム)が破れるとは!
息子は・・・

こ、これは・・・






おれが負けるはずがない。
蓮姫(リョンフイ)の領主の
親父様の秘術のち・・・力は・・・
まて・・・






おぉ・・・






小狼の勝ち!

わーい!






そうだ・・・
やつらを使えば・・・






また妙なことをしやがったら

ぁ・・・



てめぇ、次は何の術をかけやがった?



今のは礼だ。



ぁ?



私は額にあった秘術の石によって
領主に囚われていたのだ。



なるほど。
それを黒ぽんが壊したんですね。



これで私は自由だ。
あの馬鹿な親子より
よほど気骨がある童たちの行く道を
ふさぐ気も無い。

ふ。



どうしたんです?



また卑怯な手を使おうとしているな。
あやつ。






ぁ!



領主だ!



愚かものども。
我が秘術の恐ろしさを知れ!



ぁ!



ふふふふふ。






街は領主のせいで
すっかり変わってしまった。



ぁ・・・



でも、こうして街外れまで出てくれば
懐かしい風景が残っているのですね。



何を言ってるんだ?
さくら。
おまえ、この街に来たのは初めてだって。



春香・・・



ぁ・・・



か、母様・・・



母様!



母様・・・



逢いたかった。
春香。






あの小僧どもにこれ以上
好き勝手はさせん。
その為には・・・
よいな。



仰せのままに。






でも、どうして母様はさくらに
魂を宿らせる事が出来たんだ?



それは
領主が私の魂を門の中に封じたからです。






わしにたてついた者は
弔う事すら許されぬ。



母様!



おまえの母の魂は
天にも召されず
地にも眠らず
不毛なる異世界を永遠にさまようのだ!



母様!
母様!



これで邪魔者は消えた。
もう、この街はわしの物だ!
わはははははは。






門の中に封じられた私は
特別な力を持った
神の愛娘が来る日を待ち続けました。
そして、やってきたのが
この少女でした。






ぁ・・・



神に愛でられし娘よ。
さぁ、行くのです。
愛すべき人とともに
帰るべきその場所へ。



姫!






ここは・・・



覚えていますか?



忘れるはずが無い!
ここは、母様が私に扇の秘術を見せてくれた場所だもの。



秘術道具が無いのに・・・



道具はあくまで秘術の力を強める物。
さぁ、春香。
あなたの力を母に見せてください。



うん。



ぁ・・・



ん!



どうしてだ?
どうして私は母様みたいな力を出せないんだ?



それは、私が言ったことを忘れているからです。



ぁ・・・



思い出すのです。
あの時の私の言葉を。



母様の言葉・・・



ぁ・・・