ツバサ・クロニクル 9 1/3

ツバサ・クロニクル 9 1/3


妖しきオンナ。





おぞましき姿に成り果てた者たちを
ためらいもなく触れる事のできる
あなたこそ、神の愛娘。

神に愛でられし娘よ。
さぁ、行くのです。
愛すべき人と共に
帰るべき、その場所へ。



ぁ!
姫!



ぁ・・・

ぇ・・・






我が名は・・・
秘妖(キイシム)。






ぁ・・・
これは・・・



蓮姫(リョンフイ)の街の領主め。



秘術を使って我らを通さぬつもりだな。



けれど、行かねばなりません。
それが、我ら密偵衆の務めです。






秘術の力を持つものは
たとえ何人たりとも街へは入れぬ。
これがある限り、わしは無敵だ。
ふはははははははは。






あぁ!
綺麗だね。お花。



うふ。



お花綺麗、お花綺麗。



あぁ・・・



あ!
母様!



ぇ?



どうしたの?



い、いや
なんでもない。



何でだろう?
さくらを見ていると
死んだ母様のことを思い出す。



ぁ・・・



やっぱり、さくらちゃんは
無意識に羽根を捜そうとして
領主の城に行ったんだろうねぇ。



と、いう事は
羽根は城にあるって事ですか?



春香ちゃんが言ってたよね。
ここの領主は1年前に急に強くなったって。
それって、きっと
さくらちゃんの羽根を手に入れたからだと思うよ。



つじつまが合わねぇだろうが。



ん?



記憶の羽根とやらが飛び散ったのは
つい最近の話だろう。






ん、何だ?



さくら!



さくら!






次元が違うんだから
時間の流れも違うのかも。



確かめて来ます。



待って。



ぁ・・・



小狼くん、怪我してるのに。



平気です。



でも・・・



大丈夫。
羽根があったら取り戻してきます。




小狼くん・・・



ちょっと、待って。



ぁ・・・



安心して。
止めるわけじゃないから。
でも、ただ行っただけじゃ
この間の二の舞だと思うよ。

せめて、城の門にかかっている秘術だけでも破らないと。



おまえ、何とかできるのかよ?



無理。



って、いかにも策がありそうな顔で言うな!



そうだ!
侑子に聞いてみよ。



侑子って、まさか・・・



あの、次元の魔女さんに?



あら、モコナ
どうしたの?



しゃ、しゃべった!



ひゅー!
これって異世界に通じてるんだ!



便利にもほどがあるだろ?



なるほど。
その秘術とやらを破って城に入りたいと?



そうなんです。



でも、あたしに頼まなくても
ファイは魔法が使えるでしょ?



あなたに魔法の元を渡しちゃいましたし・・・



あたしが対価として貰った紋様は
魔力を抑えるための魔法の元。
あなたの魔力、そのものではないわ。



まぁ・・・でも・・・
あれがないと、魔法は使わないって決めてるんで。



そう。
いいわ。
城の秘術が破れる物を送りましょう。



ただし、対価を貰うわよ。



おれに、渡せるものがあれば・・・



これで、どうですか?



いいんですか?



うん。いいんだ。
もう使わないし。



いいでしょう。
モコナに渡して。



ぱーく。



ぁ!



ぱーん!



ぁ!



なんか、泥団子みてぇだな。



これが、秘術を破る物。



私も行く!



でもね、危険だよ。



承知の上だ!
一緒に行く。



んー。
困ったなぁ。



私も城に行って領主を倒す。
母様の仇を取るんだ。
絶対、一緒に行くからな!
いいだろ?小狼