ツバサ・クロニクル 7 2/3

ツバサ・クロニクル 7 2/3



本当にないのか?



無い・・・んだけど・・・



そうか。
違うのか・・・

よく考えたら、こんな子供が
密偵衆(みっていしゅう)のわけないか。



密偵衆?



そうだ!

この国の政府が極秘裏に放つ調査官達。
それが密偵衆だ。
彼らは各地を治める領主たちが悪事を働いていないか
諸国を漫遊し監視している。



それって、水戸黄門だ!



水戸・・・



黄・・・



門?



水戸黄門って言うのは・・・

助さんも、聞きなさい。

角さんも、聞きなさい。

かっかっかっかっか。



あぁ?



ってやつ!



よく、わかんないんだけど・・・



さっきから思ってたんだけど
なんだ?
それは?
しゃべる饅頭か?



モコナモコナ



モコナは、まぁ・・・
オレたちのマスコットってとこかな?
あるいは、アイドルかもね。



モコナ、アイドル!
人気者!



ついでだから自己紹介しちゃおうね。
えっと・・・
きみはたしか・・・



春香(チュニャン)。



そう、そう。
春香ちゃん。
オレはファイ。
こちらは、さくらちゃん。
そっちは小狼くん。
そして、あっちは黒ぷう。



黒剛だ!



黒ぷう!
黒ぷう!



黙ってろ!



で、さっきの話の続きだけど・・・
春香ちゃんは政府の密偵衆さんたちが来るのを
ずっと、待ってるんだね?



そうだ。



そんなにここの領主様は悪いやつなのかい?



悪いどころか・・・
最低だ!

あいつは・・・
私の母様を・・・



ん?
風?



ぁ!



みてえだな。
どれ。



外に出ちゃ駄目だ!



え?



きゃぁ!



これは・・・
自然の風じゃない!



領主の・・・
あいつの仕業なんだ!






うわぁっはははははは!



春香め!
親父様の力を思い知ったか!



ん?
なんで奴らが?



どうした?
息子よ。



市場で見かけた妙な連中とは
奴らのことだ。



なんだと?



まさか、奴らが密偵衆じゃねぇだろうな?



あるいはわしの力の源に
何かかかわりを持つ者やもしれぬ。
だが、どちらにせよ・・・
うふふふふ。
これが、ここにある限り
わしは無敵だ!
ふーはははははは。






なんで俺が人ん家
直さなきゃなんねぇんだよ!?



一泊させてもらったんだから
当然でしょ?



しかし、この家
あんな子供が一人で住んでいるとはな。



お母さん、亡くなったって言ってたね。
春香ちゃん。



で、いつまでここに居るつもりなんだ?



それはモコナ次第でしょ?



ったく、なんで白饅頭はあのガキの肩ばっか持つんだ?



小狼君たち、何かわかるといいね。



でも、大丈夫なのか?
あの姫。
いつもポーっとしてるばかりじゃねぇか。



足りないんだよ・・・
記憶が・・・
もとの、さくらちゃんに戻るためには・・・

取り戻した羽根は2枚だけ。
多少戻った記憶もあるみたいだけど
完全とよぶには程遠い。

ま、全ての記憶が戻っても
小狼君との思い出は戻ってこないけどね。



はぁ。



それでも探すでしょ。
小狼くんは。
いろんなセカイに飛び散った
さくらちゃんの記憶の羽根を。

これから先
どんなにつらい事があっても。



ぁ?

って、てめぇ!
なに、くつろいでるんだ!



ん?



てめぇも働け!



いやぁ・・・
黒ぴっぴの働く姿を見守ろうかなって。






さくらはどんな服が好きなんだ?



ここはどうだい?
モコナ



うーーーん。
わかんない。
この辺り、全部
なんだか不思議な力でいっぱいなの。



不思議な力?



ん?



なんだい?



市場の客寄せにやっているくじ引きだ。



おぉ?
そこのお嬢さん!



ぇ?



見たところ、旅のお方のようだが
どうだい?
一つ、運試しに。



一等賞は全部で4本。
黄色い玉が出たら大当たりだ。



ぁ・・・



さぁ、どうぞ。



そんなに回さなくてもいいんだよ。



え?



うわ!



全部一等賞?!



うわぁ!
凄い!



おぉ・・・



ほんとかい?



やったぁ!
さくら一等賞!






うん。
二人ともよく似合うぞ!

みんなの着物を調達する手間が省けて
大助かりだ!



さくら、お手柄!






きっと、神の愛娘なんだな。
さくらは。



神の愛娘?



特別に運のいい人のことをそう言うんだって
母様がよく言っていた。
神様が特別に愛しているから
幸運なんだって。
今までも、ずっとそうだったのか?



わからないの。



なぜだ?



私が覚えているのは自分の名前と・・・
あと、砂漠の中にある町並みだけ。

周りは砂ばかりで・・・
でも、その中のわずかな緑と水をいとおしん
みな、生きている。

そんなところ。

それ以外は思い出せないの。



ごめん。
嫌なこと、聞いたな。



ううん。
今、無くなった記憶を集めるために
旅をしてるんだって。
あたしは忘れてしまっているんだけど・・・
そう、教えてもらったの。
えっと・・・
小狼くんに・・・