×××Holic 8 2/3

×××Holic 8 2/3




相性が良くないとどうなるんですか?



彼女次第よ。
でも・・・
それはきっと・・・
転がる石のように・・・






おはよう!

あ!



おはよう!
四月一日君!



おはよう!
ひまわりちゃん!

で、何かあったの?



あのね、プールの水が無くなったの。



は?






音楽準備室。






もう一度、もう一度試してみよう。
何か、実現不可能な事・・・
そうだ!
前に坂上の骨董屋で見つけた鏡!
絶対、いわくのある物なのに
何回頼んでも売ってくれなかった。
あれが欲しいわ!



あ!



間違いないわ!
あの鏡よ!
すごい!



ぁ?

指が2本、折れてる・・・



ぁ!



ひょっとして一つ願い事がかなうごとに
一本ずつ折れるって事?






あなたには勧めないわ。






大丈夫!
ちゃんと使いこなしてみせるわ!






はい。

あら!
お久しぶり!

えぇ、きっとそっちに行ってると思ったわ。

こちらを飛んで行ったのは一昨日。
蝶もあなたの店のほうが居心地がいいんでしょ。

そう、八咫の鏡(ヤタのカガミ)ね?
あれは誰でも持ち主になれる物じゃないもの。






はーい!
今日の授業はここまで。
次から中世に入ります。






今日も一緒?



なんか、楽しそうっすね。



わかる?
うふふ。
ずっと欲しかった鏡が手に入ったの。



鏡?
有名な物の写しだと思うんだけど
何度頼んでも譲ってもらえなかったの。



へぇ〜。



猿の手にお願いしたの。



え?



すごいのよ!
願ったすぐ後に鏡が現れたの!
びっくりしたわ!
やっぱり本物よ!
これ!



うっ!



見て。
願いを叶えてもらうたびに折れるみたいなの。
2本折れたから、あとかなう願い事は3つだけね。



でも、それは・・・!



話に出てくる猿の手
最後に使った奴がひどい目に逢いますよね。



それは他の人の話でしょ?
私は大丈夫よ。






えぇ、無くなった理由と場所なら
心当たりがあるわ。
もう少し待って頂戴。
石はもう、転がり始めているから・・・






無から有は生まれない。
願いの成就には、必ずその代償
もしくは対価を必要とする。



じゃぁ、この前の雨って
プールの水を・・・



使ったんでしょうね。



鏡は?



知り合いの骨董屋から連絡があったわ。
この世に二つと無い大事な鏡が
突然店から消えたって。



ぁ・・・

このままでいいんでしょうか?
あの人・・・



何を言っても無駄よ。



でも・・・



で、四月一日
ロールケーキはいつ食べられるのかしら?



やべぇ!
オーブンのスポンジ!



ロールケーキ!

ロールケーキ!



転がした石はね
自分では止まれないのよ。
ただ、転がり続ける・・・
坂の終わりに向けて・・・






えぇ、少し遅れ気味ですけど
必ず間に合わせます。
いえ、ご心配には及びませんから・・・
はい。

はぁ。



駄目。
これじゃぁ、ありきたり過ぎるわ。

この論文で進路が決まる。
あたしは民俗学を続けたいのよ!

もっとインパクトのある題材で
みんなが驚くような・・・
誰もまだ書いてないような・・・
何か・・・






へ、へ、へ・・・
はぁ、はぁ、はぁ・・・



お疲れ・・・



ひまわりちゃん!



二人とも早いね!



見てたの?
あ、でも、こいつはまぐれだよ。



あほか。
おまえに合わせてやってんだ。



何だと?!
だれがそんな!
一緒に走りましょ。
抜け駆けはなしね。
みたいな事、するか!



うふふふふふ。



楽しそうだね。



ぁ!



はい。
はい。
はい!
ありがとうございます!
はい!
はい!
失礼します!



どうしたんですか?



提出した論文が教授にほめられたの!
これは素晴らしい!
大学生のレベルじゃないって!



良かったですね!



早速出版社にも話してくださって
そしたら反応も上々で
すぐにも出版できるかもしれないの!



うわぁ!
すごいですね!



それも、これも
猿の手が出してくれた鏡と資料のおかげよ。
それで八咫の鏡(ヤタのカガミ)について書けたんですもの!



八咫の鏡って?
天照大神アマテラスオオミカミ)の?



これで願いはあと二つ。
大切に使わなきゃね。



見せてもらった猿の手って
なんだか怖そうだったけど
大丈夫だったんですね?



私、運が強いから!
最初に猿の手を手に入れられたのも
私の運の強さよね。



は・・・

でも、本当に・・・



大丈夫!
他の誰が駄目でも私は特別よ!



ぁ・・・






相手を見て出方を変えるのは
心がある物だけ。
あれには、感情も温情も無い。
だから、とても即物的
とてもシビア。
彼女はその怖さに気づいていない。