×××Holic 8 1/3

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第8話。
「ケイヤク」



×××Holic


たまにはお酒じゃなくてこういうのもいいわ。

和むわねぇ。



そっちはね!

一体とれだけあるんすか?
あの宝物庫の中のもんは。



えーと・・・

いっぱい。



積むだけ積んで、押し込めるだけ押し込んであるから!
外に出すのも大変じゃないすか!
もう!

うわぁ!
陶器どうし重ねるなんて信じらんねぇ!
ちゃんと紙、巻いてくださいよ!
畳紙(たとうがみ)に包んでねぇし、
樟脳も無しっすか!

もうーーー!!!

で、こっちは何だ?



モコナ



うわぁ!
っててて。
忙しい時に遊ぶな!
危ないだろ!



えい!

えい!



わははははは!



あ、あんまり叩くと傷むから
軽く。



えい!

えい!



動いてる・・・



叩かれたくないからでしょ?
蝶だって。



いや、いや、いや。
普通、絨毯の柄は動かないっすから。



昔、仕事の報酬に貰ったんだけどね。
これ以上逃げられたら、地味ーな絨毯になっちゃうわ。



ここにあるもん、みんなそんな感じなんすか?



そんな感じって、どんな感じよ?



言ったでしょ。
宝物庫は宝の山だって。



だったらもっと大事に扱ったらどうなんすか!



時々手入れはしているのよ。



これで?



いいの。
ここは手に入れられるべきものが
手に入れるべき者に渡るための
お休みどころみたいなものだから。



お休み?



人と物にも人間同士と同じで
相性があるの。
良ければうまくいくし
そうでなければ・・・



すみませーん。



ん?



お宅のお庭に並んでいる物が気になって・・・
あ、私
大学で民俗学を専攻してまして
骨董屋さんや個人のお宅を回っているんです。
なかなか譲ってもらえないこともあるんですけど
見るだけでも勉強になりますし・・・
それで、つい、お邪魔を・・・



いいのよ。

あなたがここに来たのも必然だから。



ぁ。



あなたはどれに惹かれたの?



これです!



ぇ?



これって何ですか?



何だと思う?



万華鏡・・・じゃないですよね?
中、覗けないし・・・
中に何か入ってます?



えぇ。



これ、譲っていただけませんか?
何だかわからないけど、一目で惹かれちゃって!



あなたには勧めないわ。



お高いって事ですか?



いいえ。

でも・・・

どうしても欲しいと言うのなら
約束して頂戴。
その筒を決して開けないで。






あの人、大丈夫ですかね?
約束、守りますかね?
開けないっていうの・・・



さぁ・・・

四月一日、あの筒あるの気づかなかったでしょ?



あぁ、はい。
全然。



それくらい厳重に封印してあるの。



そんな大変なもんなんすか?

だったら、もう一回連絡してきっちり言っといたほうが・・・



言っても開ける時は開けるでしょうし
開けないなら最初から開けないわ。
彼女はおそらく
誰のいう事も聞かないでしょうけど。



え?






あ!

す、すみません!



あら?
あなた・・・



ぁ?



昨日のお店のバイト君よね?



あ!



ここの生徒だったんだ!
私も明日から教育実習なの。
不思議な縁ね。



あぁ。



私、そういう事、多いのよ。
なんに寄らず、引きが強いって言うの?



あの・・・
あ!



これも私が惹かれたんだから
まだ中身はわからないけど
いわくのある物だと思うわ。



あ!
それなんですけど・・・



はい。
あ、教授!
えぇ。
論文のほうは今、資料を探している所なんです!



あの筒、なんだって?



いや・・・

わかんねぇけど、侑子さんが開けるなって。



いえ、大丈夫です!
任せてください!



けど、開ける気、満々だろ?



え?なんで?



まだわからないけど・・・って事は
いつかはわかるつもりで居るんだろう。



は!



はい!
絶対に間に合わせますから!
失礼します。



あの!



そろそろ行かなきゃ。
またね。



あ・・・あ!
ちょっと!
待って!



あ!



え?



ごめんなさい。



開いた!



枯れ木?

ううん?
ひょっとして、これ
猿の手』かも!



猿の手



文献で見たことがあるわ!
願いを叶えてくれるって言う、呪物よ!



あ・・・あ・・・
あの・・・でも・・・
本物じゃないかもしれないし・・・



わからないわよ!
これまでにも私
安く買ったものが掘り出し物だったり
なかなか無い出物を見つけちゃったり。
強運なのね。きっと。

そうだ!
これが本物かどうか、早速試してみるわね!



あ!
やめたほうが・・・



こういうのはどう?

これから夜までに雨を降らせて。



あ・・・






で、この雨ね・・・



はぁ・・・



あれなら、こんな事くらい
簡単だけどね。



って事は、本物?



だけど、相性が良くないから・・・



相性って、あの人と猿の手っすか?



彼女は認めないでしょうけどね。
自分を過信しているから。