イリヤの空、UFOの夏2 3/3

イリヤの空、UFOの夏2 3/3




な、何だと?
このぉ〜!







まだ、30分ぐらいあるね。
中で待ってようか。



あっ!



ぁ?
伊里野?
どうしたの?

うわぁ!



大丈夫。平気。



ほんとに平気?
とにかく座ったほうがいいよ。
あそこに・・・ね。

あのさ・・・



もう大丈夫。
ほんとに。



でもさ、まだ顔色良くないし・・・
ね、もし具合が悪かったら
誰かに電話して迎えに来てもらうから。

ぁーごめん。
答えてくれないんだよね。
どうせ・・・



あ、



その、違うんだ。
立ち入った事を聞いちゃったな・・・
と思って・・・



約束する?



え?



誰にも、言わないって。



ぁ・・・






仲間が死んだの。
あのころネバダにはマンタのパイロットが5人居て
その子は5人の中のエースだった。

誰が言い出したのかよく覚えていないんだけど
残った4人で墜落地点に行ってみようって事になって
フライトレコーダーからログを盗んできて
衛星写真とつき合わせて墜落地点の見当をつけて
こっそり基地から抜け出したの。

でも、そのうちに食べる物も水も無くなって
このまま死んじゃうんじゃないかって思った。



連れてってくれた?
その人。



私たちのこと、どう思っていたのかはわからないけど
なんにも無い砂漠の真ん中にね
公園があったの。

地平線までなんにも無い砂漠の真ん中にね
そこだけコンクリートアスファルトで舗装された場所があって
ブランコとか、ジャングルジムとか、シーソーとか
そんな遊具がいっぱいあった。

まだ、ペンキも乾いてなかった。
もちろん子供の姿なんか一つもなかった。
私たち以外には誰も・・・
私たちはみんないらない子なんだって、その時思った。

生きてるうちだって誰とも会っちゃいけなくて
誰とも話しちゃいけなくて
死んだら最初から居なかったことにされちゃうんだって。

ヘリが来て基地に連れ戻されて
でも、誰からもしかられなかった。

私の話はこれでおしまい。
この話をしたのは浅羽が始めて。
だから、浅羽も誰にも話さないで。



うん。



ごめん、せっかく誘ってくれたのに
迷惑ばっかりかけて。



いまさら・・・



え?



何言ってんだ?
伊里野が鼻血噴出してぶっ倒れるのなんか
いつもの事じゃ。






ん。



サンキュ。






ぁーー。



入部届け・・・



ぁ?



入部届け。

氏名 伊里野 加奈

新聞部
に入部を希望します。

希望理由

浅羽がいるから。