イリヤの空、UFOの夏2 2/3

イリヤの空、UFOの夏2 2/3





おぉーっ!

そこだ、そこでチューだ!
浅羽特派員。
明日のためにチューだ!






いやーっ!
ぴったりくっついっちゃって、もう!



黙れ。
知らん顔してろ。






そこだと言っておろうが!
何をしている!
浅羽特派員!






あれ見てよ。あれ。
あんな加奈ちゃん、見るの初めて。



なぁ、寝てんじゃないのか?
あれ?



やっぱそう思う?



それより浅羽だ。
何、映画 見てるんだあいつ?



映画館で映画見て何が悪いのよ。



馬鹿な
そもそも映画なんて二の次だろうが。
何のためにわざわざこんな がら空きの暗闇に誘ってるんだ?



浅羽、いけ!
せめて、そこでチューだ!
えぐりこむようにチューだ!



無理よ、浅羽君には。



だよなぁ〜。



あ、起きちまった。



何 話してんの〜!
あー、気になるー!!



何?
頭 動かさずに目だけ見ろよ。
ここから見て10時の方角に水前寺がいるだろ?



え?
隣が夕子ちゃん?



連絡があったろ?
浅羽が妙な電波出してるって。
たぶん、水前寺のしわざだ。
せっかくだからただ乗りする。



あ・・・あのさ、伊里野って授業中もよく居眠りするよね。
ひょっとしてバイトでもしてんの?
それで夜、遅くなるとか・・・
あ、いや、別にいいんだけど。
うちの学校、バイト禁止だけど
やってる奴、いっぱい居るし。
不良とか、そういうんでもないから。






ん?



出るぞ!



え?
あ、ちょっともう少し。






浅羽君
そっちの席に置いてあるバックを取ってくれ。



自分で取れば?



いいから早く!



重ーい!
何が入ってるの?



昨夜から様子がおかしかった。
この界隈に妙な暗号通信が飛びかっていた。
強力なスクランブルがかかっていて
発信源は複数。
午前7時くらいに一度ぱたりとやんで
10時を境に通信量が激増した。



だから・・・?



両特派員を監視しているのは
我々だけではないのかもしれん。



けど・・・
あ!



見るな!
気づいていたか、なかなかどうして
見どころがあるではないか。
浅羽夕子君。



どうするの?



今や演劇部なんかやめて、是非我が新聞部に・・・



ち、違うの。
そうじゃなくて、あの二人がもしそうなら・・・



へぇーー。
爆破する。






水前寺が座る場所を変えた。
何かやるつもりなのかもしれん。



ちょっと待ってよ!
あと5分。
せっかく加奈ちゃんが起きて
二人がお話はじめたんだから。



長居しすぎた。
もう潮時だ。






おそらく自前の無線機で我々の盗聴器の電波を傍受しているのだろう。
そこで同じチャンネルに大出力の電波をねじ込んで
奴らのレシーバーを焼き切る。
いいかね、浅羽君。
きみの任務は場内全体にくまなく目を光らせておくことだ。



そっちは何するの?



へっ
知れた事よ!






バイトしてると無理かな?
つまり、えっと・・・
うちの新聞部に伊里野が入ってくれたら
僕も嬉しいんだけどって話なんだけど・・・

バイトってどんな?



基地の仕事。



たとえばそれって、僕にも出来ないかな?



そんなの、駄目!



ぇーー!



絶対・・・駄目・・・






あー!



え?



トリャー!






な、なんだろう?
今の・・・



ぁ!



ど、どうしたの?



お!



ちょ、ちょっと!



ど、どうしたの?



タンクに両手ついて!



え?
今、捨てたの何?



こっち向いて。



うわぁ〜!!
ちょ、ちょっと。



ズボン、脱いで。



早く!






そーこかぁ〜!



ちょ、ちょっと放しなさいよ!
放しなさいよ!
ちょっと!






こっち・・・



ちょ、ちょっと・・・



見張ってて!



うぁっ!



ちょっと、伊里野!
何やってんの?



乗って。



え?
え〜!?



早く乗って!






見事なトラップである!
素晴らしいぞ!
伊里野特派員!



馬鹿、帰る!
放して!
イヤー!






伊里野、前
見えない。






なんなのよ!
なんなのよ!
あの女!!



同感だ!



はぁ?



伊里野特派員には少し奇妙なところがある。



なに、それ?



彼女は毎朝、バスで学校に来る。
見樽車庫発、園原基地経由、園原駅行きのバスだ。



それが何?



夏休みの少し前までは
そんなバスは走っていなかった。

それと、電話だ。
彼女は毎日、2回必ず電話をかける。
どうも、情報サービスのような物を聞いているのではないかと
思うのだが。

まだある。
彼女は校内放送でよく職員室に呼び出されるのだが
かなり高い確率でその後早退しているらしい。
いったいどこへ行くんだろうな?






落ちた、落ちた。
川に落ちた。
ねぇ、伊里野ってば、
うわぁ〜!






ハ、ハックション。
俺の周りには女性陣のほうに優秀な人材が多いらしいな。



何、それ?



で、男性陣の位置置く浅羽特派員の事だが・・・



あ、



あいつはあいつで、どうも何か知っているようなふしがある。

へへへへへへへ。
まぁ、シェルターの一件からまだ間もないしなぁ〜。
何があってもおかしくは無い。






やぁー
お兄ちゃんのエッチー。






お兄ちゃんは・・・
お兄ちゃんは変態じゃないもーん!



いきなり何をするか!貴様!

もう、勘弁ならん、くらえ・・・
胡蝶蹴り!



だからーー!



うぉ・・・!






ねぇ、もう平気だよ。
ここまで来れば大丈夫だよ。

ねぇ!



あ?



あの・・・あのね・・・
ワイヤーを一つ見つけたら全部調べないと駄目なの。
一つだけじゃないから。
他にも絶対あるから。
だから・・・



ワイヤーって・・・
あのボタン?



うん。






あ、猫。



猫、好き?



げ、下駄箱!
ひょっとして伊里野?
僕の下駄箱に猫 入れたの?



ぁ・・・



え?あの・・・
別にいいんだけど・・・
怒ってるとかそういうわけじゃぁ・・・



違う!



ぁ・・・






普通、女の子をグーで殴る?



俺は婦女子が相手だからだからと言って手加減はせん!



鬼!悪魔!スットコドッコイ!



スットコドッコイはそっちだ!



何でよ?



いいか
巷の噂では浅羽特派員が転校生を
シェルターに連れ込んだということになっているが
真相はその逆だ!



あ?



目撃情報を統合するとだな
浅羽特派員のほうが伊里野特派員にひっぱりこまれたんだ。
あの腰抜けが暴行未遂をやらかしたなんて与太よりは
そっちのほうがよっぽど納得がいくだろうが?



お兄ちゃんは腰抜けじゃないもん!



はぁ?



あのなぁ、お前、一体どういう兄貴だったら満足なんだ?



帰る!

何よ!
せめて送るよ・・・
くらい言ったらどうなの?



な、何だと?