灼眼のシャナII 22 2/3

灼眼のシャナII 22 2/3




弟、妹って、それ・・・
つまり・・・


なんだ・・・
出来たらしい。



そう・・・
そうなんだ。
おめでとう、父さん。
って、あれ?
僕は、こういうべきなのかな?



ありがとう。
そして、おめでとう。だ。
悠二、兄さん。



兄さん・・・か。
でも、どうして
それで母さんが困るのさ?



おまえにしなければならない話があったからだ。



僕に?



今度のことが無ければ話す気は無かった。
だが、どんな神様のお計らいか
こういう事になった。
私は今のおまえになら全て話してもいいと思った。
千草さんは、どう言うべきか困った。
そういう話だ。



聞くよ。
だから、わざわざ帰ってきてくれたんでしょ?



千草さんと私が若くして結婚したのは
子供が出来たからだ。



僕の・・・こと?



しかし、その初産はひどい事になった。
しかも全部終わった後に医者から告げられた。
もう、子供は出来ないだろうと。



え?
でも・・・



あぁ。
結果的にはそれは誤診だった。
実際16年経つ今まで
子供は出来なかったわけだが・・・
とにかく当時の私たちにとって
子供はその時生まれた二人だけになった。



二人?



あぁ、生まれて、生きる事の出来なかった子。
生まれて生きる事の出来た子。
その二人だけだ。



ぁ!



次男だからというだけじゃない。
生きる事のできなかった兄さんが
確かに居たことの証として。
もう一つ。
兄さんの分も合わせた二人分の人生を
はるかに生きて欲しいという願いをこめて
私たちはおまえに
悠二
という名前をつけたんだ。
だから次に生まれる三人目の子にも
兄さんと悠二、二人の次である証として
三の字を入れたい。
いいか?



うん。
話してくれてありがとう。
父さん。






お帰りなさい。



父さんがいて、母さんがいて
新しい命があって
これが覚悟なのかどうかは、わからない。
だけど、はっきり感じる。
人の営みでつながってゆく
この世界を守りたいって。






珍しいな。



ちょっと相談があってさ。






お待たせ。シャナちゃん。



予定よりも早い。



シャナちゃんのほうが先に来てたのに。
どうしたの?



一美、子供の作り方、教えて。



ぇ!
なんで・・・そんな事・・・?



みんな、そうやって困る。

悠二も、貫太郎も、千草も。






どうしたの?
千草に子供が出来たんでしょ?
作り方、教えて。



ぁ・・・



私たちの一存で教える訳には・・・
ねぇ、千草さん?



えぇ、カルメルさんとか、アラス・トオルさんと
相談して決めないと・・・



ん?






アラストールまで。



ぁ。
アラストールさん?



ぜ、善処を願う・・・



千草は後で教えてくれるって言ったけど
どうして今じゃ駄目なのかわからない。
一美ならすぐ答えてくれるかもって。



ぁ・・・



ねぇ、一美、教えて。



ぁ・・・
あのね・・・

それを人前で聞くのは
裸を見せるよりも、ずっと恥ずかしい事なの。



裸を見せるより?!



だから・・・ね。



ふぅ。



そう、坂井君
お兄さんになるんだ。



うん、嬉しそうだった。
悠二、本当に強くなってる。
鍛錬の事だけじゃない。
以前とは違う。
まっすぐ前を見てる。
だからって、今すぐ悠二が街を出ていく訳じゃない。



ぁ。



でも、いつまでも猶予があるわけでもない。



うん。



もう、一美はぐぜ(紅世)の事を全部知った。
どこにも差は無いから。



シャナちゃんも好きだって言うの?



言う!
そして、一美と決着をつける。
決戦は明日。
12月24日。



クリスマス・イヴ。
方法はどうやって?



悠二はあたしたち二人を前にしたら
何も出来なくなる。



うん。



だから、あたしたち二人が
別々の場所で待ち合わせをして
どっちに行くかを悠二に選ばせる。
選ばれたほうが勝ち。



どうやって、その約束をしてもらうの?



事前の干渉を絶って、冷静に判断させるのなら
文書による通達が最適だと思う。



文章?
ラ、ラブレター?



手紙は今、書けばいい。
私が届ける。



こ、これ?



駄目だよ、こんなのじゃぁ!
二人で買いに行こう。
商店街にいいお店があるから。






坂井君、
突然、こんなお手紙を書いてしまってすみません。



悠二へ。
以下のとおり通達する。
しっかり確認する事。



これは、私たち二人が話し合って決めた事です。



明日(みょう)、12月24日
19:00時。(ひと きゅう まる まる じ)
御崎市駅の時計塔、オープン記念
イルミネーション・フェスタへ。



私たち二人のどちらかに会いに来てください。
届けたい言葉があります。



私は北出口に。



私は南の出口に待ってます。
吉田一美。



シャナ。






シャナ?






佐藤は僕の悩みを茶化す事も
笑い飛ばす事もしなかった。
だけど・・・






本当にそうしたいんなら
できるだろう?
小難しい理屈なんかすっ飛ばしてよ。






それが出来ないから相談に行ったってのに。
でも、確かに問題の大元はそこにあるんだよなぁ。
そう、僕にはそういう
吉田さんへの気遣いなんか無視してしまうほどの
我武者羅な熱意が足りないんだ。
僕がもし、変われたら・・・
みんなのように変われたら・・・



ぁ。



ぁ。
池くん、お買い物?



僕も・・・
変わりたい。






明日、付き合ってもらえないかな?



うん、夕方までならいいよ。
夜からは大事な約束があるから。
シャナちゃんと決めたの。
二人で同じ時間に坂井君と待ち合わせをして
どちらかを選んでもらおうって。



だったら、その前でいい。
聞いてもらいたいんだ。
僕が君の事をどう思っているのかを。






知らなかった。私。