灼眼のシャナII 10 2/3

灼眼のシャナII 10 2/3




うん。
えーっと
仮装は、オズの魔法使いロミオとジュリエットをやるんだ。
男のほうはもう、決まってて
ライオンが田中。
ブリキのきこりが佐藤。
かかしが僕。
それから、ロミオが坂井だ。



で、私が犬のトト役を引いて、オズ組み決定。



残っているのは
ドロシーと魔法使いとジュリエット役。
はい、どうぞ。



よりによってジュリエット・・・
坂井の相手役をあの3人で決めるって・・・



坂井の恋人が決まるわけか。



変な言い方するなよ。



もしジュリエットになったら・・・
坂井君と一緒に歩くんだ・・・



ジュリエット・・・
悠二の隣に立つ役・・・



ぁー。



ぁ。
どうぞ。



「ジュリエット」
吉田 一美

「ドロシー」
平井 ゆかり

「魔法使い」
近衛 史菜



一美、おめでとう!



おめでとうって・・・



だって坂井君の恋人役ゲットだもんね。
シャナちゃんと近衛さん おさえて。



え・・・



バレバレだよ。



三人の坂井君をめぐる戦い。



そんな・・・
違うの。
そんなんじゃなくて・・・



嬉しくないの?



それは、その・・・
嬉しいけど・・・



うん・・・



前ならきっと、もっと喜んでいた。
でも、そうじゃないのは
もう、それだけじゃ駄目ってわかってるから。



たぶん、シャナちゃんも・・・



残念だったね、シャナちゃん。
でも、きっとドロシーも似合うよ。



デザイン、あたしが考えるから。



不思議。
吉田一美が悠二と並ぶのが
前みたいに嫌じゃない。
もう、そんな事じゃないんだ。
もっと・・・



坂井君と私はもっと・・・



吉田さん、よろしくね。



あ、はい。

やっぱり、嬉しい。
でも・・・



そうだ。
近衛さん、大丈夫かな?

僕たちは昔からパレード見慣れてるけど
初めての人に仮想はね・・・
僕のロミオと交代してもいいんだけど・・・



ぁっ。



悠二!
何、言ってるの?
決まった事なんだから、ちゃんとやる!



シャナ・・・



そういうの、親切でも何でもない!
悠二は吉田一美とロミオとジュリエットをやる!
いい?



うん。
ごめん。



シャナちゃん・・・






はい、はい。
ただいま・・・

はい、坂井でござます。

あら、ゆうちゃん?






ん。






放課後の準備作業は6時までが原則。
それ以上やる場合は、申請してください。
まぁ、近くなったら泊まりもありみたいだけど・・・



はーい。



へー!
じゃぁ、坂井君のお母さんに協力してもらえるんだ!
助かる!



ある程度の衣装の生地は
用意出来てるって。
今日にでも取りに来てもらっていいって言ってたよ。
僕は他の準備があるから・・・



あ、私が行きます。



一人で持てる?



じゃぁ、シャナちゃんも一緒に・・・



うん。



ぁ?






たぶん・・・



ぁ。



同じ気持ち。






シャナちゃんに怒られたからいいとこ見せたんだ?



いや、たまたま母さんが洋裁やってたことを
思い出したから。



ふーん。



なに?



いや、いや、いや・・・






はぁ。






そう、ゆうちゃんがロミオなの?
あんまり似合わないわね。



そんな事、ないと・・・
思い・・・ます・・・



そう?
ロミオって恋人が死んでしまったと思って
後を追うぐらい、恋に夢中になってしまう情熱家でしょ?
ゆうちゃんはね。



死んでないのに、死んだと思うなんて
悠二ぐらい抜けてる。
だから、似合う。



あは。



それはひどいよ。
ロミオが死んだ後、ジュリエットも自殺するんだよ。
純粋なんだよ。
きっと、ただ傍に居たくて・・・



ぁ。



そうね。
人を好きになるって、単純に近づきたいって事だものね。
ほんとに身体中全部くっついていたいって思わない?



ぁ。



今までうまく言えなかったんですけど・・・
そういう感じ・・・
かもしれないです。



よくわかんない。
でも、近づきたいってのはわかる。



でも、現実だと
見えてるのに届かないって言うか・・・
なんて言うんだろ・・・



何か、見えない壁がある。
破れるかもしれないけど
よくわかんない壁・・・



うん。わかる。



そうやっていっぱい考えるのも大事だと思うの。
嫌になってあきらめるなら、それはそれでいいの。
そこまでの気持ちだった。
って事だから。

でも、そうじゃなかったら・・・
ほんとに近くに居たいと思ったら・・・



ぁ。



どうすれば、いいか
気持ちが教えてくれると思うわ。



はぁ。






お夕飯、食べてってくれればいいのに。



いえ、ありがとうございました。



ありがとう。



気持ちが教えてくれる。
か・・・



一美、
後ろ振り向かないで聞いて。



ぁ?



つけられてる。



ぇ?!



ともがら(従)じゃない。
でも、悠二の家を出た時からついてきてた。
何者か確かめるから、私の言うとおりに動いて。



う、うん。






あの尾行の手際。
只者じゃない。



誰なんだろう?



それを確かめる。
今度はこっちがつける番。



あいつ、悠二の家に戻ろうとしている。



ぇ?



千草に何かする気かも。
先回りする。






はぁ。
案外、早く終わったな。



ぉ!
ぇ?



えぃ!

かわした!

おまえ、何者?



いてててて。
あー。
やられたなぁ。
やぁ、強いんだね。
お嬢さん。



おまえ・・・



父さん、何してんの?



え?



父さん?



ぁ?



はじめまして。
私は坂井貫太郎だ。



ぁ。






まったく、貫太郎さんの悪い癖ですよ。
昔から茶目っ気が変な方向に飛びすぎるんですから。



ほんとだよ。
帰ってきたならすぐ家に入ればいいじゃないか。
それを、こそこそ見張ったり、
シャナたちをつけ回したりして・・・



やぁ、それも、これも
留守がちな大黒柱として
普段の家の様子を見ておきたいと思ってのことでね。
まぁ、無茶は・・・しんだ。



まったく・・・



ほどほどにしてください。
女の子たちを尾行して脅かすなんて・・・



面目ない。
でも、もう夕方だろ?
せめてお世話になってるお嬢さんたちを
家まで護衛しようと思ったんだ。
ま、そんな必要もなかったようだが。
はははははは。



貫太郎さん!



い。



お詫びに是非、お夕飯食べていってね。



はい。



いただきます。



おかずは各自で取り分けるのが
うちのやり方なの。
貫太郎さんがこうでしょ?



みんなで楽しく騒ぎながらご飯を分けて食べるのは
わくわくするだろ?



シャナも吉田さんも
早く食べないと無くなっちゃうよ。



さ、召し上がれ。



うん、美味い。
やっぱり千草さんの料理だ。



ありあわせですよ。



や、美味しい物は美味しい。



あの、お母様ですけど
お父さんもすごく若いんですね。



そうかな?



まぁ。



二人とも学生結婚だからね。



え?



学生結婚?