灼眼のシャナII 9 1/3

灼眼のシャナII 9 1/3


哀しみのマイルストーン




二十世紀、ニューヨーク。
そこでマージョリーは若きフレイムヘイズ、ユーリイと出会う。

純粋な正義感を持ち使命を真摯に遂行しようとするユーリイ。
そんな彼の姿勢にマージョリーが一抹の不安を覚える中
ともがら(従)アナベルグが動き出した。






良いな、坂井悠二
これまでの鍛錬で得た存在の力の繰り
それを更なる次元へと昇華させるのだ。



う、うん。



どうした?



あ、いや・・・
大体の感覚は今までの鍛錬でつかんだし
心構えも出来てたつもりだけど
いざとなると何だか・・・
この僕が自在法だなんて・・・



大丈夫。
今の悠二ならきっと出来る。



うん。



ぁ。






封絶!



これは、これは。
進歩の舞台へようこそおいで下さいました。
蹂躙の爪牙(じゅうりんのそうが)マルコシアス殿。
弔詞の詠み手、マージョリー・ドウ殿。



そうやって余裕で挨拶できるって事は
当然、一人じゃないわね。



どっちにしてもやる事には変わりはねぇ!
派手にパーティーをおっぱじめようぜ!
イヤッハー!






始まったみたいね。



うん。



なんで馬鹿正直に話したの?



ぇ?



弔詞の詠み手に。
誰も助けられなかった。
今度こそ助けたい。



ぁ。



そんなあんたの想いなんか
当然、突っぱねられるってわかってたはずよ。



うん。
わかってた。
わかってたけど・・・
僕には・・・
それが間違っている事だとは・・・
どうしても、思えないんだ。






俺には間違っているようには思えないんですけど。
そのユーリイって奴
誰かを助けたいって思ってるんでしょ?
それがどうして?



仮にあんたたちがフレイムヘイズだとして
私に来るなと言われて
でも、その私が危機的状況にはまったら
あんたたちは どうする?



そ、そりゃぁ、やっぱり・・・
なぁ。






いやいや、まったく
フレイムヘイズの粗暴な事ときたら。
とどのつまりは人間の抜け殻だと思っていましたが
どうして、どうして
その抜け殻に・・・



ごたくの続きは・・・



あの世でいいな!



殺意と憎悪を詰め込んだ害毒の塊!



気づいている?
奴の気配。



あぁ、どうにもうまく捕らえきれない。
全体、どういうカラクリなんだか?



私の特性は見てのとおり
蒸気でぼやかす事でして・・・
そのぼやかす対象とは、すなわち
気配です!



ふ。



ちっ。
これが弱っちぃともがら(従)の・・・



ご自慢の手品ってか?



美貌は隠す物では無いだろ!



その程度の不意打ちが通用すると思ったら
大間違いよ!






間違ってないね。



誰かを助けたい。
力になりたい。
それが僕にとってのフレイムヘイズとして
ここにある理由だと思うの。
今、弔詞の詠み手さんが戦っている。
助けられるのは僕だけだ。



ともがら(従)の討滅こそが
フレイムヘイズの存在理由。
人助けは結果であって、決して目的なんかじゃない。
だけど、ま、
たまには別のケースに付き合うのも悪くはないかも。



いいのかい?
ウァラク



聞き返すんじゃ無いわよ。
ほんと野暮なんだから。






パンチとジュディのパイ取り合戦!



パンチはジュディの目に一発!



こ、これは?



やつの即興詩か?



さすがは千変!
なんでもありね。



丸焼きが嫌で壷焼きになったってか?
ヒヒャハハハハハ!



どうせなら封絶を張らずに破壊していただきたい物ですなぁ。



あんた!
やっぱりこのビルを?



もちろん、既にお聞かせしたとおり。
これぞ文明の加速!
素晴らしいとは思いませんか?
このそびえ立つ摩天楼!

人間の力を・・・
世界の在りようすら変える文明の力を!
無いものを目指し、失って補う。
この偉大な力の行く末を!

私はもっと見たい!
引き寄せたい!
だから・・・私は・・・
与えるのです!

炎による喪失を!
次なる変化に向かう人間たちへの祝福として!

そうすれば・・・
焼け跡から今をも越える力が芽吹く!
世界を変える文明の力が
私の手で!
私の炎で!

あぁ、何という悦楽!
何という快美(かいび)!



ふっ。
もうちょっとましな詭弁(きべん)が聞けると思ったのに。
ちんけな放火魔に期待したのが間違っていたわ。



やはり、理解できませんか。
人間である事を棄てた抜け殻には。