灼眼のシャナ11 2/3

灼眼のシャナ11 2/3





でも・・・



なんだ、ここに居たのか。



あっ!



何か調べ物?



うん・・・まぁ・・・



何?



別に、たいしたことじゃない。



あっ。



あん、心配しなくても大丈夫だよ。



池くん。



さっきも言ったよね。
平井さんとは仲がいいだけで、恋愛感情はないって。

だから、頑張って。






姐さん、ただいま帰りました。



今日の具合はどんなもんですか?



うっもう・・・うるさいわね。
頭にガンガン響くでしょ。



よう、栄太!
なんでぇ、その顔の傷はよう。



はぁ?



あぁ、これはちょっとボールが当たっちまって。



啓作、栄太。



うん?



なんか、お酒も飽きたわ。



え?






なんでやねん。



なんでやねん。



なんでやねん。



なんでやねん。






キスってどんな意味があるのかなって。



あら、でもどうしてそんな事を?



それは・・・



簡単なようで難しい質問ね。
シャナちゃん。
調べたって言ってたけど。



うん。
図書館で本を読んで調べても
前から知ってた程度の事しか・・・

どんな対人作法かは知ってたし、見たこともあるけど・・・



けど?



みんなが思っている意味と私が知っている意味とが
全然違うみたいな気がしたの。

千草ならその意味を知っているかと思って・・・



小説とか文学とかは読んだ?



個人の主観が入っているものは
的確な分析と論理的な思索の役にたたないって
アラストールが言っていたから。



アラス トオルさんって確か遠くにいらっしゃる
お父さん代わりの方ね。
立派な見識をお持ちだわ。



うん。



でも・・・

でもね、シャナちゃん。



うん?






でもね、シャナちゃん。
こういう場合にはそれじゃぁ、わからないかもね。
資料とかに載っているのは
厳正な事実や理論でそれ以外のものはないわ。
だけど、シャナちゃんが考えていることは
それ以外のものなの。



うん?



つまり、あやふやで完全な答えの無い
そう、心や感情のお話。



心や感情?



身体を触れ合わせるってのが親愛の情の表れだって事はわかっているわよね。



うん。
キスもその動作の一つでしょ?
握手とか、抱き合うとか、みんなそうしてる。



う〜ん。
それはそうなんだけど・・・
ほら、それをアラス トオルさんにするのは
かまわないよね。



うん。



じゃぁ、ゆうちゃんとは出来る?



え?!



そ、それは・・・



改めて考えたら結構 恥ずかしいでしょ?



う、うん。



それがこのお話の核心。
それにキスって言っても
ほっぺにするのと
口と口でするのはかなり意味が違うのよ。



悠二と・・・口と口・・・
あぁ〜・・・

そんなのやだ。
されたくない。



それでいいの。



千草・・・



させちゃ駄目。
それはアラス トオルさんにだってする事じゃないのよ。

シャナちゃん、あたしはね、こう思っているの。
口と口とのキスは誓いのようなものだって。



誓い?



そう、自分の全てに近づけてもいい。
自分の全てを任せてもいい。
そう誓う行為。



それがキス・・・






今夜はこれでおしまい。



ふぅ。ちょっと疲れた。
あっ!
あのさぁ、シャナ。



何?



零時迷子のおかげで僕の力は零時になるたび元に戻っていくわけだろ?



だから何?



それって歳をとらないって事なのかな?



自分で確かめてみれば?
長い時間がかかるだろうけど。



そっか。



何よ?



シャナとずっと一緒に居ることになるのかなって。



うん?



あっ。



シャナ!



何?



おまえたちに一つ頼みがある。



え?






これでいいの?



うむ。



千草、電話借りるね。



どうぞ、でもシャナちゃん、
もう学校へ行く時間よ。



うん。



もしもし。



うむ。始めてくれ。



千草、



あたし?



はい。お電話変わりました。



も、もしもし。



はい。



お初に御身の声に浴する、奥方。
我が名はアラストールと。



まぁ、アラス トオルさんでいらっしゃいますか。
平井ゆかりさんには、いつもいつもお世話になっております。
わたくし、坂井悠二の母、千草と申します。



こちらこそ、並々ならぬ世話をおかけしている。



いえ、たいしたことは何も。



それで、わざわざご連絡をいただけたのは
どのようなご用向きからでしょうか?
平井ゆかりさんの事とお見受けいたしますが。



そのとおりだ。
あぁ、それと あれのことはシャナと呼んでもらって差し支えない。
我もそう言い慣わしている。



あら、アラス トオルさん公認のニックネームですのね。



うむ。
まぁ、そのようなものだ。
それで、我が用向きだが・・・



はい。



実は昨日のことだ。



昨日?



あっ。



あ?



少々お待ちください。



ゆうちゃん、シャナちゃん
早く学校に行きなさい。



行って来ます。



はい、行ってらっしゃい。



あ・・・



ほら、早く!



お待たせいたしました。



奥方の恋愛観を否定するわけではないのだが・・・
昨日のような話はやめていただきたい。



シャナちゃん、喋ってしまったんですねぇ。



いや、我が無理やりに聞きだしたのだ。



いずれにしても、あのシャナちゃんにそんな事
話してもらえるというのは
深く信頼されている証拠ですわ。



うむ。



シャナちゃんのこと、随分と大事に育てられたのですね。
とっても純粋でいい子ですわ。



当然だ。
それ故にシャナに昨日のような
坂井悠二との不用意な接触を誘発するがごとき発言は
謹んでもらいたいのだ。



お話は伺いました。



奥方は賢明だ。
これで我が懸念も全て察してくれよう。



でも・・・



うむ?



シャナちゃんの為にもう少しお話をさせていただいても
よろしいですか?



うむ。



シャナちゃんはおっしゃるとおり
誇り高く、力強い いい子です。
でも、その一方で
とても幼くもろい部分を持っているように思えるのです。