×××Holic 17 3/3

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幸せどころか、
当たり前の幸せさえも受け入れられなくて・・・



そうじゃないのよ。
四月一日

あれはね、バランスをとっているの。



バランス?



やっちゃぁいけない事をやりたいって言うのは
確かに人間として至極当たり前の気持ちだけど
それと、彼女の事情とを混ぜちゃ駄目。

過度であろうが、無かろうが
幸せは決していい事ばかりじゃないわ。
いい事である分の対価を支払わなければならない。
そして、その対価を踏み倒す事なんて
出来ない。

彼女はね、逃げてるの。

幸せを受け入れない代わりに
幸せを受け取った時の責任や約束から逃げてるの。
彼女が言ってたとおり
破滅願望でもない。
そこにあるのは、計算。



ぁ!

けど、責任から逃げるためって言っても
自分から赤信号に飛び出すって
そんなの計算で?



でも、ひかれた相手は原付なんでしょ?



ぇ!



腕にひびが入っただけ。



ぁ、はい。



飛び出すタイミングは自分で計れるんだから
それならいっそ、トラックの前に飛び出すほうが
よっぽどしちゃいけない事よ。

結果、あの人は
会社での大事なプレゼンテーションをせずに済んだ。

そんな緊張するプレッシャーのかかる場に出ずに済んだ。
昇進もせずに済んだしね。



でも、あの人
おれに花束を!



見ず知らずの他人の為に救急車を呼んでくれる様なお人よし。



ぅ・・・



入院中の怪我人から花束をぶつけられた程度で
怒り出すわけも無い。

学校の非常ボタンだってそうよね。
押しちゃいけないボタンだとは言っても
別に核兵器の発射スイッチと言う訳じゃないんだから
怒られる程度よ。

受験でも同じ。
第一志望の学校に落ち続けたとは言っても
しっかり別の学校に受かってる。

四月一日が入れてくれたコーヒーを
あたしにぶちまけようとしたのも・・・
既に自分が事情を抱えてるって知っていて
それを解決してくれるはずのあたしが
そんな事で怒るわけも無いという計算が
そこにはあった。



ぁ・・・



の・・・かもね・・・。



そんな・・・



彼女は絶対に押してはいけないボタンがあれば
何があっても絶対に押さない人よ。






あのメガネをかけたら
彼女は自分にとっての正しい選択肢を
選ぶ事が出来るんですか?



まさか・・・

だから、あれは
ただの伊達メガネだって。



でも、それって・・・



メガネはいつもつけている
四月一日みたいな人には日常だけど
そうでない人には異物。
意識せざるを得ないの。



ぁ・・・
まぁ、そうでしょうけど。



彼女には最初っから
何が自分にとって最善かわかっているから
最善を避ける事ができるのよ。

だから、ちょっと角度を変えて
無意識を意識させてあげれば
それでいい。

時が過ぎてそれが、いずれ身体の一部になれば
彼女の願いもかなうでしょう。



ん!
じゃぁ・・・
あの人の対価は何ですか?



逃げ道。



ぇ・・・



これから先
幸せを受け入れるために
どんなプレッシャーにさいなまれようとも
あの人は逃げられない。

今まで一度も経験してこなかった事に
彼女は耐えられるかしらね?



って事は・・・
塗絵さんのことは、彼女自身の問題で
アヤカシは・・・?



関係ないわ。



でも、あの肩で光ったのは?



ショルダーバックの金具じゃないの?






燃えないゴミ



はぁ・・・






やれるものなら、やってごらんなさい。