ツバサ・クロニクル 13 1/3

ツバサ・クロニクル 13 1/3


まぼろしのオトギ。



ぁ・・・



姫、寒くないですか?



大丈夫です。



今度の世界は寒いよねぇ。
ま、オレがいた国よりは暖かいけど。



だから、知らねぇって言ってんだろ!



絶対、黒剛が犯人だもん!



何の騒ぎかな?



黒剛がモコナのおやつ、食べちゃったの。
侑子の差し入れのシュークリーム!
とっても楽しみにしてたのに。



俺じゃねぇっつってんだろ!



いやぁ〜ん!
黒剛、逆ギレ!
こわーい!






むかし、むかし
北の街のはずれの城に
金色の美しい髪をしたお姫さまが居たそうな。

ある日の事
その姫のもとに一羽の鳥が飛んできて
輝く羽根を1枚渡してこう言ったそうな。



あなたに不思議な力をあげましょう。



姫は羽根を受け取った。
すると、たちまち王様とお后様が死んで
姫は城の主となった。

そして、その羽根に導かれるように
街の子供たちが夜な夜な城へと集まり
二度と戻って来なかったそうな。



おとぎ話かって?
いや、かれこれ300年も前に
本当にあったお話さ。

しかも、その伝説と同じように
北の街でまた、子供たちが消え始めたそうな。



不思議な力を、持った羽根?






いい雰囲気になってきたぜ。



さっきの話にぴったりだね。



あのひげ親父の話
本気で信じてるのかよ?



不思議な力を持った羽根だもん。
それって、さくらちゃんの記憶のかけらっぽいじゃない?



でも、羽根の波動は感じない。



とにかく、調べてみる価値はあると思います。



ぁ!
あれは・・・



SPIRIT



ぁ・・・



なんか、歓迎されてないって感じがビシバシするね。



されてねぇだろ。
実際。



伝説を確かめようにも、これじゃ無理だよね。



せめて、城の場所だけでも教えてもらえるといいんですが。



小狼くん・・・



お前たちは何者だ?



おれたちは・・・



ふん。



へ。



ぁ・・・



本を・・・書いているんです。



本?



はい。

諸国を旅して、古い伝説や建物を調べて
本にまとめるのを生業にしている者です。



おまえみたいな子供がか?



いえ、この人が。



そうなんです!
彼はオレの助手で、この子はオレの妹でして。
で、これはただのおまけと言うか
どうでもいい人。



おまけだ・・・

うお!



やめなさい!



ぁ・・・



え?



先生。



事情を知らない旅の方々に失礼ですよ。
皆さん。



ぁ・・・






先ほどは街の者が無礼を働き申し訳ありませんでした。
私はこのSPIRITの街で医師をしている
カイル・ロンダータと申します。
せめてものお詫びに、どうか私の館を
宿の代わりにお使い下さい。



ありがとうござ・・・



どういう事だ!
先生!



落ち着いて。
グロサムさん。



こんな時に、素性の知れぬやつを街に入れるとは?
どういうつもりだ?



こんな時・・・
だからです。

この方たちは各地で伝説や伝承を調べていらっしゃるそうです。
今回の事件で、何か手がかりになる事を
ご存知かもしれません。



よそ者が何を知っているという?



ここで暮らす者には、わからないことを。



良かろう。
ただし、その客人を
夜、外に出さんようにな。



あぁ、グロサムさん。



すみません。
紹介もできなくて。
今のは、町長と大地主のグロサムさんです。
グロサムさんは、街のほとんどの土地を所有している
実力者なんです。



大変なときにお邪魔しちゃって
すみませんね。



皆さんは伝説の事を?



知っています。



私もあの話はよくある
おとぎ話だと思っていました。
でも、まさか本当に子供たちが消えてしまうとは・・・
消えた子供は、もう20人にもなります。



そんなに・・・



俺たちを見て怪しむわけだ。



この寒空の下、今頃子供たちはどこで何をしているのか・・・
それを思うと心が痛みます。



ぁ・・・






さっきはよくも噛みつきやがったな!



あぁ・・・いや・・・



とりあえず、宿は確保できたと。



はい。



それにしても、さっきはナイスフォローだったよ。
本を書いているだなんて
よくすっと出てきたね。



父さんと旅をしているときにも
ああいう事が、よくありましたから。



それにしても、なかなか深刻な事態だね。



伝説のように、金の髪のお姫様がかかわっているんでしょうか?



ぁ・・・



姫!
姫!
大丈夫ですか?