×××Holic 9 1/3

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第9話。
「ユビキリ」




ねぇ、四月一日君。



あぁ、ひまわりちゃん!
どうしたの?



四月一日
運命の赤い糸って信じてる?



運命の赤い糸・・・?



うん。
世界中のどこかに小指同士が赤い糸で結ばれている
運命の相手が居るって話。



ん?



昨日の夜ね、この本読んでたんだ。



ぁ。
運命の相手・・・?

ひまわりちゃん、そんな話をおれにふるってことは
まさか・・・

まさか・・・!
婉曲的な告白?
いや、それしか考えられないぞ!
シャイな乙女の精一杯の心情との
男、四月一日君尋、しかと受け止めましたよ!
おれたちを待ち受けるのは
バラ色の学園生活!
そう!おれとひまわりちゃんの小指には!



小指には心経(しんきょう)って言う
心臓につながっているツボがある。



な・・・!
なにー!?

くー!
またもや、おれとひまわりちゃんがいい感じのときに・・・
って・・・

百目鬼!!



小指が心臓につながっているから
運命の赤い糸が結んであるのは
小指ってことになっている。



そうなんだ!



ぁ!
ひまわりちゃん!



ちなみに江戸時代の遊女は
好きな相手に自分の左手の小指を切って
手渡す習慣まであったらしい。



え!
え・・・え・・・
小指を・・・
切るのか?



あぁ。
相手を裏切らない証としてな。

指きりげんまんの歌はその風習に由来してるんだ。



物知りなんだね。
百目鬼君って!



寺育ちだからな。
爺さんにその手の話をよく聞かされただけだ。



そうなんだ!
うらやましいな!
そんなおじい様が居て。



い!

そういうひまわりちゃんは運命の赤い糸って信じてるの?
まさか、その運命の相手に心あたりなんて・・・?



うん!



えー・・・



そういう人がもし本当にどこかに居たとしたら
すごいロマンチックだよね!



え・・・
あぁ・・・うん・・・

そうだね!

そうだよね?

ほぅ。






今日、侑子さんの家に着いたら
とりあえず洗濯から始めてそれから・・・



ちょっと!
やめて!



ちょっとだけでいいんだ!



離して!



話だけでも聞いてくれよ!



いやよ!
あなたなんか顔も見たくないわ!



あ、あのぉ〜。



あ。



あ?



何だったんだ?
今の?






そこ、そこ!



梅雨もすっかりあけましたね。
やっぱり梅雨って雨童女と関係あるんですかねぇ?

え!



あぢぃ〜・・・
だ・・・



侑子さん?!

だめだ!
暑さでやられてる!

しっかりしてください!
侑子さん!

侑子さん!
侑子さん!






ぷはぁ〜!
生き返った!



あぁ!
良かった!

ここんところ、だいぶ蒸しますからね。
脱水症状には十分気をつけてくださいよ!

あれ?



これって・・・?

クンクン。

水じゃない!



冷蔵庫のミネラルウォーターなら
中身を焼酎に入れ替えておいたぞ!



なに?!

なんでそんな事するんだよ!



誰かドジな奴がひっかかると思って。



ひっかかるだろ!
普通!



モコナも焼酎、飲みたーい!
四月一日、コップ!



相変わらず単語で命令かよ!



いいんじゃない?
こうしてあたしも元気になったんだし。



ぁ!

はぁ〜。



いいわ。
美味しいお酒を飲ませてくれた四月一日
いい物、見せてあげる。



ぁ?

キセル入れじゃないですか?



そ。
でも、これ
中身はキセルじゃないのよ。



え?



筆ですか!

うわぁ!
動いた!



だぁー!!
なんじゃ、こりゃぁ?



管狐(クダギツネ)よ。



キツネ?
これがですか?



尻尾の辺りに面影があるでしょ?



いやぁ、尻尾って言われても
どっちが尻尾だか全然わからないんですけど。
うー!



あら・・・
随分気に入られてるじゃない?



単に、首絞められているだけだと思うんすけど・・・!

ふぅ。はぁ、はぁ、はぁ。



こんなに可愛いけど、霊力はすごいわよ。
何せ、雨童女が対価としてよこした子ですもの。



あー、こら、こら、こら!



なぁに?
四月一日、てれてるの?



そんな訳ないじゃないすか!

ぁ。
そうだ!
侑子さん。
侑子さんは運命の赤い糸ってあると思いますか?



ん?



いや・・・
学校でひまわりちゃんと話している時に
話題に出たんですよ!



あるかもね。



やっぱり!



でも、その糸の端がたった一人にだけ
つながっているとは限らないんじゃない?



ぇえ?
そんな・・・



ぁ!



誰か来たみたいね。



え?



く、く、く・・・
ぷはぁ〜。
うーん!

ひっく!
けふ。






あぁ、お待たせしました。

あ!
あなたはさっきの?



あぁ!
先ほどはありがとうございました。
なんか、あの人すごくしつこくて困っていたんです!
ほんとに助かりました!



あ、いえ。
おれで役に立てたんなら良かったです。
あの・・・
もしかして、侑子さんの知り合いですか?



侑子さん?
あの・・・私・・・
知らない間に偶然、ここに迷い込んじゃって。



あぁ、そうか。
ええと、それはですね・・・



それは偶然じゃないわ。



ぁ!



この世に偶然は無い。
あるのは必然だけ。

ここに来られたという事は
きっとあなたには叶えて欲しい願いがあるはずよ。



願い・・・ですか?



えぇ。

ここは、対価さえ払えば
何でも願いを叶える店なの。



ぁ・・・
お願いって言うほどでもないんですけど・・・
何だか最近、小指がうまく動かない時があるんです。



あれ?
そんな人、たしか前にも・・・

ぁ!



あなた、悪い癖があるようね。



癖・・・ですか?