闇のパープルアイ 第10話。

闇のパープルアイ 第10話。


第10話。
生きている倫子!?
悲しい再開。




闇のパープルアイ 第10話





やめろ!
倫子!

倫子!



きゃぁーー!



倫子!



なによ!



それはママの大切な形見なの!



気がついたらベットに血がついてて。



麻衣、落ち着け。
落ち着くんだ。



あたしは一体なに?






豹の動きが・・・
はっきり見える。

殺される・・・
殺される・・・






麻衣?

麻衣。

麻衣。
しっかりしろ。



パパ!



大丈夫か?
怪我ないか?



豹が・・・
襲ってきたの。

怖かった。
とても怖かった。
殺されるかと思った。



もう、大丈夫だ。



ぁ。



パパ?

あたし、豹よりも
自分自身がもっと怖かった。

あたしを襲ってきた豹の動きが
はっきりと見えたの。
そしたら・・・
身体の中から、訳のわからない力が・・・



落ち着くんだ。
麻衣。



なんなの?
あの力はなんなの?
私って一体何者なの?






倫子。
また何かが起きようとしている。
豹が現れたんだ。
まるで小田切貢のような黒い豹だ。
麻衣も倫子と同じ運命をたどってしまうのか?

倫子。
あいつも短命種なのか?






麻衣!
正式に部員になる気になった?



ううん。
だけどね・・・



あのね、すっごい
かっこいいコーチが教えてくれる事になったんだよ。
大学部の先輩なんだけど・・・
見て、あの人。
かっこいいでしょ?



高階先輩!



水島君だったよね。



えぇ。



きみのプレーは素晴らしかった。
見せてもらったよ。



はぁ。



高階暁生。(たかしな あきお)
暁生でいいよ。



この人、昨夜の豹と同じ匂い。






間違いない。
昨夜の・・・



俺の車がどうかした?



この車、あなたの?



あぁ、そうだけど。



あたし、昨夜
この車にひかれそうになった。



同じ仲間を襲うなんて気が進まない。
でも、そうするしかないんだ。



君も同じだ。
獣の血をひいているんだ。



同じ、獣の血?



いや、むしろきみの血のほうがずっと濃い。
純血種だからな。



純血種?
何の事なの?



きみは何も知らないんだね。
自分自身の事を。






PYREL CORPORATION



あいつ、こんな所に一体何の用があるの?






はい、水島です。



パパ。



あぁ、麻衣か。



あたし、同じ血をひく仲間って言う人に会ったの。
あたしの事を純血種とも言ったわ。
それって昨夜の事と関係あるの?



麻衣。
すぐに帰って来なさい。



あたし、知りたいの。
自分が何者なのか、ちゃんと知っておきたい。



ちょっと待つんだ。
今、どこに居るんだ?



パイレル・コーポレーション。

その人、そこに入ったわ。
あたしも今から中を探ってみようと思ってる。



待て!
パパが行くまで待っているんだ!
麻衣!






責任者に会わせてくれ。



就業時間はもう終わりました。
何か、お約束でも?



ここの責任者に伝えろ!
会わなきゃそちらにとってまずい事になるってな。






工場長の榊と申します。
私どもに何か?



娘を迎えに来た。



ほぉ。
お嬢さんはこの工場内に?



時間の無駄はやめよう。
私は医者だ。
遺伝子に関する研究をしている。
変身人間のね。
娘にもしもの事があれば
変身人間に関するデータを公表する。



なるほど。
しらを切るわけにはいかないようですな。



手を出すな!

私が戻らなかった場合
データは自動的に発表される。
困るのは君たちだよ。

麻衣を返してくれるかね。



ふふふふふふふ。

それははったりね。



まさか・・・
曽根原薫子。
なぜ?
生きているはずがない!



お久しぶりね。
水島君。
なにがあってもあなたは
変身人間を発表する気など無いはずよ。

変身人間を説明するには
尾崎倫子に触れないわけにはいかない。
惚れた女が豹に変わったなんて
あなたには死んだって発表できない。
まして娘が純血種だってことはね。



麻衣は無事なのか?



安心なさい。
彼女を襲わせたのは殺すためじゃない。
その潜在能力を確かめるためよ。



また、17年前と同じ事をやろうと言うのか?



麻衣ちゃんはここに居るわ。



御覧なさい。



麻衣!



この人たちはね
変身人間の遺伝子を持つ一族なの。
でも、倫子のように完全に変身できる人間は
数十年、数百年に一度しか生まれてこない。
ましてや麻衣ちゃんのように
変身人間同士の子供である純血種は例がないわ。



黙れ!
黙るんだ!



なにを・・・
麻衣に何をするつもりなんだ?



そこでゆっくり見てなさい。
麻衣ちゃんが倫子の血をひいていることが明らかになる一瞬よ。



やめろ!
曽根原!

麻衣は・・・
麻衣は変身人間じゃないんだ!



今はまだね。
でも、その力は眠っていても
誰よりも強く受け継いでいるはずよ。



麻衣。



これが・・・
これが、純血種の力よ。



パパを放しなさい!



うわぁっ!



豹を撃つのよ!



しかし、あの豹は暁生さんです。



たかが豹だ!
撃ち殺すんだ!



うわぁー!



麻衣。

麻衣。

麻衣。

麻衣。
しっかりしろ!



パパ。
あたし・・・
あたし、いったい・・・



話は後だ。






早く車に乗って。



どうする?
一緒に来るか?






今日は見逃してあげる。
でも、いつかきっと
あなたのほうから、やって来るわ。
とうとう、あたしの切り札を使う時が来たわ。






あたしが純血種?

両親が変身人間?

それに、あたしのあの力。
一体何が起ころうとしているの?






驚いたな。
曽根原が生きていたなんて。



曽根原は短命種の研究をネタに
変身人間の血をひく俺たちの仲間にくいこんでいった。



知ってたのか?
短命種のこと。



あぁ。
変身人間の宿命だと聞いている。



短命種のことは麻衣にはまだ話さないで欲しい。
私も医者だ。
短命種を克服するための研究を続けているんだ。



あぁ。






パパ。
あの女の人も高階さんも言ってた。
あたしが純血種だって。
両親とも変身人間だって。
そうなの?

ママは変身人間だったのね。

本当の事、話して!



話さないですむなら、そのほうがいいと思ってた。



でも、
パパは違うわね。



あぁ。
違うよ。



それじゃぁ・・・
パパは・・・
本当のパパじゃないって事?



確かに
パパと、おまえに
血のつながりは無い。
でも、おまえを愛してる。
17年間、実の娘だと思って育ててきた。



パパとママは
愛し合ってたんじゃないの?



愛し合ってたよ。
とてもね。



でも、あたしのパパは違う人よ。



おまえの本当のパパも・・・
ママを
とても 愛してた。



わからないわ。
あたしには。



嫌いになったか?
パパが。



大好きよ。
誰よりも。
大好きよ、パパ。
でも・・・






あたしは、パパの本当の子じゃない。
あんな秘密があったのに・・・
17年間もパパが愛し続けるママって・・・
どんな人だったの?
逢いたい。
ママに会って聞いてみたい。
ママは、本当にパパを愛してたの?






高校生3人、虐殺!!
夜の倉庫街
猛獣の仕業か!?



連続殺人の人食い豹
元女教師の持ち物か?
未だ、行方不明で捜査






詳しい事は載っていない。
パパから聞いた事ばかりだわ。






なんのつもり?



きみのお守りをしろって
パパからの命令でね。
さぁ、行こう。



ちょっと待って!

視線を・・・視線を感じない?



あぁ、そう言えば・・・



待って!



どうした?



この匂い
あたし、覚えている。
かすかに記憶があるわ。






どうかしたのか?



パパ。



ん?



あたしの事、愛してるって言ってくれたでしょ?



あぁ。



でも、自分と血のつながっていないあたしを
娘として愛せるの?



え?



普通なら・・・
パパは・・・
あたしの事、憎んでもいいはずよ。
だって・・・
あたしのパパは・・・



ママのためにこれだけは信じて欲しい。
17年前のあの時代
パパも、ママも、
そして、本当のパパも
みんな一生懸命、運命と戦っていた。
本当のパパは
命がけでママを守って、死んでった。
二人ともママのことを同じぐらい愛してたんだ。






麻ー衣。






あの甘い匂いは
ママの匂い?



麻衣?
どうかしたのか?
ぼんやりして・・・



パパは、まだママを愛してるの?



小さいお前の事を考えて
再婚しようと思った事もあった。
でも、だめだった。

おまえのママを、まだ忘れられない。



ねぇ、パパ。



ん?



一緒に行方不明になった人が生きているんなら
生きてるんじゃない?
ママも。



いや、
あの時、ママはひどく傷ついていた。
ママはパパの心の中で生きているんだ。



ごめんね、パパ。
変な事言って。
先、帰るね。






この匂い・・・



麻衣!

一緒に帰ろう。



うん。
待ってて。

ママ・・・






麻ー衣。






麻衣!







麻衣。
何があったんだ?
きみなら車だって避けられたはずだ。



ママを見たの。



本当に、きみのお母さんだったのか?



あたしと同じ年頃だったわ。
そんなはず無いけど・・・
わからない。
でも・・・
そのために、パパが・・・






ごめんなさい。パパ。
私のせいでこんな・・・



おまえが無事で良かったよ。
でも、事故のとき
おまえ、何に気をとられていたんだ?



えぇ、ちょっと。

これ、水 替えてくるね。



うん。



高階さん。



ママを見たって言わないのか?



そんな事、パパに言ったら
きっと飛び出して行ってしまうわ。



ママと麻衣が同じぐらいの歳のはずが無い。
きみを誘い出す罠だったんじゃないのか?



罠でもいいの。
あたし、ママに会いたい。



暁生君。
麻衣は?



あぁ、先に帰るって言ってた。



何かあったのか?
麻衣と。



麻衣が母親を見たと言っている。



まさか・・・
麻衣の母親は17年前に死んだんだ。
知ってるよね。
倫子は短命種だった。



しかし、麻衣は彼女の匂いを嗅いだと言っている。
俺たちの嗅覚は、いい加減じゃない。

聞きたいことがあるんだ。
どうして一人の女を
しかも、死んでしまった人間を
思い続けていられたんだ?



忘れられるなら、そのほうが楽だとも思ったさ。
だが、どうしても あのままじゃ終われなかった。
でも、俺だけじゃない。
誰だってそんな風に愛せる相手が一人は居る。
問題は
めぐりあえるか、あえないかだけ。

俺、そんなふうに思ってる。

暁生君。
麻衣が倫子を探しに行くんじゃないか心配だ。
麻衣を見守ってやってくれないか?



わかった。






本当に大丈夫だから
早く、麻衣を。



ここに居ろよ。
すぐ戻って来るからな。



慎ちゃん!
大好きよ。






もし、倫子が生きているとしたら・・・






良かった。
先に帰っていたか。

それは?



ママよ。
ママに間違いないわ!



この建物は・・・



知ってるの?



はい、水島です。



麻衣ちゃん?
お父様、大変だったらしいわね。



曽根原!
あなたが?



あなたのお父様を巻き添えにしてしまったのは
予定外だったわ。
ただ、母親の目の前で豹に変身してもらえれば・・・
と、思っただけなの。



やっぱりあれは、本当のママなの?
でも、ママなら昔のままで居るはず無い。



じゃぁ、自分の目で確かめてみれば?
写真を見たでしょ?
そこに行けば会えるわよ。
是非、いらっしゃい。
待ってるわ。



高階さん、
この建物、知っているなら教えて。



行くつもりか?



ママに会いに行くわ。
ママに会って確かめたいの!



落ち着けよ。
赤ん坊の頃の記憶なんて思い込みにすぎない。
間違いなく罠だぜ、これは。



罠でもいい。
ママが生きているのよ!
あたし、高階さんが止めても行くわ!



待て!
俺も一緒に行くよ。






何を確かめに行くつもりなんだ?



パパと、ママの間に何があったのか知りたいの。
あたしが居る事でパパが苦しんできたとしたら・・・



ママに会えばわかるのか?



ママは本当に・・・
パパを愛してくれていたのなら
パパの・・・
17年間の愛も報われるわ。

ごめんね。
私とママの問題に巻き込んで。



きみのママが生きているかどうか・・・
生きているとしたら
俺の未来にも希望が見える。



どういう事?
高階さん。



いい加減、高階さんはやめてくれ。
最初に言ったろ?
暁生でいい。



わかったわ。
暁生。






慎也さん、
大丈夫なんですか?
傷のほうは。



大丈夫なわけ無いだろ?
どうだった?
頼んだ検査のほうは。



見てください。
以前もらった血液のサンプルと
今日、もらった血液のサンプルと比較してみたんですが
慎也さんが言うような
細胞の劣化は起こっていませんでした。
健康そのものの細胞です。



間違いない。



何なんですか?
一体、何の研究してるんですか?



急いで血清を完成させたいんだ。
何も聞かずに協力してくれ。






ここはもう、使われてないはずなんだ。



この匂い。
ママの匂い!



キャッ!

どうして?
どうして?ママ!



やめて!
ママを傷つけないで!



少し痛いだろうが、我慢しろよ。



痛くない。
腕なんか痛くない!
だって本当のママに会えたんだもの。



どうしてそう、言い切れる?



わかるの。
あたしにはわかるのよ。



本当の親だったら
きみを襲うはず、無いだろ?



音がしたの。
変な音が響いたら急に凶暴になったの。
きっと誰かに操られていたのよ。



待てよ!






どこからか、あたしの事
見てるんでしょ?
お願いよ。
ママに会わせて。



いらっしゃい。
麻衣ちゃん。
来てくれて嬉しいわ。






17年前、倫子も今のあなたのように
あなたと水島慎也を守るために
一人であたしとの決着をつけに来たのよ。

二人で海に落ちてあのままだったら
たぶん死んでいたでしょうね。
でも、助けられたの。
変身人間の血をひく一族に。
あなたのママと一緒にね。



ママは・・・
ママはどこに?



あのドアの向こうよ。



そんな・・・

どうして?

ママは歳とって無いわ!

信じられない。

ママはパパと同い年のはずよ。

こんなに若いなんてありえない!



本物の倫子よ。
あなたにならわかるはずでしょ?



匂い。
間違いない。

ママの匂い。



冷凍生態保存。
言葉くらい聞いた事あるでしょ?
倫子はね
17年前のあの日のまま眠り続けていたのよ。



ママ?



ママー!






そろそろあなたの
本当の力を見せてもらいましょうか?

変身なさい。麻衣。






この音は?



う・・・

う・・・

やめて・・・

ママ・・・



ママ?



そこに居るのね。



ママ?
しっかり、ママ!



麻衣!
大丈夫か?



暁生。



こっちへ。






力強く脈打っている。



あぁ、心配ないよ。
きっと大丈夫だ。



ママ?

ママが気づいたわ!



待て。
いきなりママと呼んでも混乱させるだけだ。



気分は・・・
どう?



あなたたちは誰?
ここはどこ?
どういう事なの?



これが、ママの声なのね。



あたし、随分眠っていた気がする。
その間、ずっと曽根原の声を聞いていた気がする。
けど、あれは夢?



夢じゃない。
でも、もう、心配ない。
あたしたちは・・・



僕たちは二人ともあなたの仲間だ。
敵じゃない。
安心していいんだ。



仲間?



もう少し休んだほうがいいわ。
顔色が良くない。



あたしたちが海に落ちて
あれからどれくらい時間が経ってるの?



少し・・・
長め・・・かな・・・



麻衣?

答えて。
あれから何年経ってるの?



17年間。

あなたは17年間
曽根原に眠らされていたんだ。



17年間・・・
眠らされて・・・



何年経っても
間違えるはず無い。
この匂い。
麻衣。
17歳になったのね。
あなたは、私を覚えてないでしょうね。



覚えてる。
こうして抱かれたの、覚えてるよ。
ママ!



麻衣。



なんか、不思議な感じ。

あたしが覚えてる麻衣は・・・
もっと小さくて
腕の中にすっぽり入ってしまうくらいだったのに。

今のあなたは
背も高くて・・・
歳もあまり違って見えないわね。

ママなんて呼ばれると
なんかくすぐったいわ。

慎ちゃんね。
慎ちゃんが育ててくれたんでしょ?



慎ちゃん?
ママ、
パパのこと
慎ちゃんって呼んでたのね。



慎ちゃんが・・・
約束してくれたの。
あなたの事を守ってくれるって。

慎ちゃんは?
慎ちゃんはどこ?



元気よ。
パパは
今でもママのことを愛してる。



慎ちゃん。
早く慎ちゃんに会いたい。



行こう。
パパのところへ。
今すぐ会いに行こうね。



本当だ。
パパの言ってたことは
本当だったんだ。
ママもパパを愛してた。
二人の心は17年離れていても
つながってたんだ。