闇のパープルアイ 第4話。

闇のパープルアイ 第4話。


第4話。
黒豹のプロポーズ。



闇のパープルアイ 第4話



あなたも変身人間なの?



やめて!
私を怒らせないで!



倫子!



おい、お前 何やってんだよ。



その女はいずれ俺の事が好きになる。



なに?



倫子。



慎ちゃん。



*******



あーあ。
いいよな、女子は楽勝だよ。



おい、俺たちだって負けるわけにはいかないんだよ。



そうだよ、頑張ろう。



お!対戦相手のお出ましだよ。



5番って誰?



尾崎倫子。



ノーマークよね。



たしか・・・
去年はレギュラーじゃなかったよ。



今年は何としても勝て!
これ以上、俺に恥をかかせるな!



はい。



わかってるわね。



はーい。
ブラボー、ブラボー。ファンタスティック。
いいぞ。この調子だと連勝間違いなしってとこだな。



では、強気の監督の表情を・・・



お、そうか。



さん、はい。



紀子さ、いつから新聞部になったわけ?



手伝ってあげてるんでしょ?



おい、もう1枚撮ってくれ、もう1枚。



いきますよ、はい、チーズ。



サンキュ。



どうした?



ううん、なんか誰かに見られているような気が。



誰かって相手はずっとあんたに注目よ。



そうじゃなくて・・・






背筋がゾクッとするような、鋭い視線だった。



キャー!



やだ、あたし。
何てことを。






監督!
先輩たちが・・・
表で・・・



なに?



表で血だらけ・・・






また猛獣の仕業なのかな?



ね、よく撮れてるでしょ?



そういう問題じゃないでしょ。



穂久闘学園女子バスケ部。
号外
三人惨殺!?
またも猛獣の



それにしてもさ、おかしな事続きすぎだよ。



三人が発見された体育館裏の現場



これよ、ひょっとしてどっかに猛獣使いみたいのが居てさ
そいつが襲わしてんじゃねぇかな?



しゃべるなよ、そんなのどこに居るのよ。



聞き流せよ、お前。



ねぇねぇ、だからさこれは
誰かに猛獣の霊が取り付いてるとしか考えられないでしょ?



ねぇ、聞き流さないでしょ。
ちょっと。



ねぇ、ねぇ、ねぇ。
倫子はそう思わない?



霊のほうが良かったかも。



ん?



んなことあるわけ無いでしょ。






変身しかかった?



うん。
突き落とされた時に反射的にその子達に飛びかかってた。
でも、殺してなんかいない。
すぐに我に返ったし、その子達も逃げてった。



わかってるさ。



やっぱり居るのよ。
私と同じような人が。



おい、馬鹿な事 言うなよ。
だって曽根原教授も死んだし
もうそんな人間なんか・・・



じゃぁ、昨日の事件はどう説明するの?
ねぇ、慎ちゃん、私どうしたらいい?



どうしたんだよ、今日は。
随分弱気だな。



だって、あたし変身しやすくなってるの。
自分じゃコントロールできないのよ。



大丈夫だよ。
倫子は俺が必ず守る。
たとえどんなやつが来ようとな。



慎ちゃん。






おまえにその女は守れない。






このユニフォームともそろそろお別れか。
私はさ、一応次の大会で引退するよ。
まぁ、大学まで行ってバスケってガラじゃないしね。
倫子、どうするの?



いろいろあって考えてなかった。



まったく、呑気なんだから。



慎ちゃん、どうするんだろう?



ごめんなさい。



動物
野生生物の生態



先輩、興味あるんですか?



え・・・?
別に・・・



そうでしょうね。



ちょっと何なの?
あの子。



先、行ってるね。



みんな集まれ。
ストップだ、練習。
おい、水島、ちょっと来い。



はい。

俺に何か?



マスコミの方がいらっしゃってるんだ。
お前を取材したいそうだ。



俺を?



おう、何でも高校生の有望なプレーヤーを特集して
雑誌に載せるらしいぞ。



先生、僕は・・・



おう、水島だけでいいそうだ。



オッケイ。



もちろんいいよな。



あぁ、そりゃいいですけど。



うい。

田切さん、どうぞ。



田切です。よろしく。



結構いい男じゃん。



そう?



早速だけど水島君は上の大学に進むんだな。



あぁ。



バスケットは続ける?



そのつもりでこの学校を選びましたから。



そう。
勉強とは両立してる?



何とか。



恋愛とは?
恋人は居るのかな?



あんたには関係ねぇだろうが。



水島。



答えたくなければ答えなくていい。



君にとって一番大切なものは?



いったい何が目的なんだ?



じゃぁ、質問を変えるよ。
きみがバスケットを始めようと思ったきっかけは?



これ以上、倫子に近づくな!



水島!



慎ちゃん、ねぇ、どんな事聞かれたの?



いや、たいした事じゃないんだ。



すいません。
いつもはもうちょっと愛想のいいやつなんですけどね。






慎ちゃん、やっぱりバスケ続けるんだね。



聞いてたのか。



聞こえたの。
考えてみれば私たちそういう話、しなかったね。



そういう話って?



将来の事とか。



あぁ。



慎ちゃん、雑誌に載って有名になっちゃうかもよ?



何、言ってんだよ。



ありがと。
じゃ、また明日。



お、じゃぁな。

倫子。
気をつけろよ。



気をつけろって、何に?



いや、だからさ
変な事に巻き込まれないようにさ。
お前の身体、普通じゃないから。

ごめん。それじゃぁ。



またあの視線だ。
背筋がゾクッとするような、鋭い視線。

ぁ。



尾崎倫子さんだね。



えぇ。

あ、慎ちゃんならさっきまで一緒に・・・



きみの話が聞きたいんだけどな。



あたしの?



さぁ、どうぞ。



この視線だ。
この前からずっとあたしの事を・・・



やっぱり、今度学校でじゃ駄目ですか?






何が目的なの?
あたしをどうする気?



まだわからないのか?



あ、や!
やめて!

離して!



おまえが欲しい。
お前を俺の物にするのが目的さ。



紫の目。
まさか・・・
この人が・・・



変身はしないのか?
あなたはいったい・・・

あ!



俺はお前の仲間だ。
探してたんじゃないのか?
自分の仲間を。



嘘よ、そんなの。

でたらめよ!



なんだったら変身して見せてやろうか?

おまえをズタズタに引き裂くくらいわけないんだぜ。



いい加減な事、言わないで!






俺はおまえの仲間だ。






嘘よ、そんなの。
信じられない。






そうですか。
はい、わかりました。
それじゃぁ、おやすみなさい。



どうだ?
居たか?



慎也さんのとこにも行ってないみたい。



そうか。



自分の娘をもう少し信じれば?



信じてるよ。



だったら・・・



信じてるけどさ。



あ、そうだ。
地区大会近いからさ一人でどっかで練習してんのかもね。
ほら、そういうの人に言うの照れくさいじゃ。



そうかな?



うん、そうだよ。



そうだよな。



うん。



倫子、お帰り。



ただいま。



どこ行ってたんだ?



あ、慎ちゃんと映画見てたら遅くなっちゃって。



待ちなさい!



パパ!



どうして嘘をつく?
パパは嘘は嫌いだ!
パパにも言えない事なのか?



ごめんなさい。



お姉ちゃん。



ごめんね、パパ。
あたしだって嘘なんかつきたくないのよ。
どうしたらいいの?
パパがもし、あたしの事を疑いだしたら・・・



お姉ちゃん、入るよ。



あたしのフォローにも限界があるよ。

パパがしつこく言うから慎也さんのとこ、電話しちゃったの。
ごめん。



舞子を攻めるつもりはないよ。



でもさ、ほんとのとこ、どこ行ってたの?
ここんとこ、ちょっと多くない?

女同士でも言えないことか。



舞ちゃん。
あのね・・・



いいよ、無理して言わなくても。
でも、慎也さんを悲しませるような事だけは絶対しないでよね。



舞子。






俺はおまえの仲間だ。

探してたんじゃないのか?
自分の仲間を。






たしかに私は探していた。
もしあたしと同じ変身人間が存在するなら
たくさんの事を聞いてみたいと思ってた。
でも・・・
まさか、あんなやつが・・・



倫子。



慎ちゃん。



昨夜はどうしたんだよ?
舞子ちゃん、心配して電話してきたぞ。



うん、ちょっとコンビニ寄ってて。



そっか、ならいいけど。



この前、穂久闘の人たちが殺された事件。



うん。



やっぱり居るのかもしれない。
変身人間がもう一人。



どうしてそんな事がわかるんだよ。



ただ、何となく。






慎也、わかったよ。



おう、組み合わせきまったか?



あぁ、こりゃどうやら因縁の対決になりそうだな。



え?



予選、第一試合、穂久闘学園とだよ。
なんか、あいつら女子部員が襲われたの
俺たちのせいみたいに言っているらしいぞ。



でも、まぁいずれは当たるチームだろ?



え、そりゃそうだけどさ。



水島先輩。
ちょっといいですか?



ネコ科の動物は獲物の捕らえ方としては
近くから飛びかかって首に噛み付き
頚椎と頚椎の間に牙を差し込んで
首の神経を切断して殺すのが特徴的。



それがどうかしたのか?



この前の穂久闘の女子たちが殺されたの
まったくこんな感じでしたよね。



そうかな?
おれ、ちゃんと見てないからちょっと。



あれってネコ科の猛獣に殺された気がします。
トラとか、豹とか。



緑川さ、なんで俺にそんな事 聞くんだよ。



先輩、まだ前の質問に答えてくれて居ませんよね。
変身人間って何の事です?
なんか関係がありそうじゃないですか。



想像力豊かなんだな。



先輩・・・



ほら、もう部活始まってるぞ。






はい。



ありがと。



今度の予選って大学のバスケ部の監督が直々に見に来るらしいよ。



そう。



水島君にとっては大事な試合になりそうだね。



うん。



尾崎。



はい。



昨日いらっしゃった小田切さんがな
今度はおまえを取材したいらしいんだ。



え?



やったじゃん。



こんな手の込んだ事してどういうつもり?



一晩考えて気が変わったかなと思ってね。



そんな訳、無いでしょ!
とにかく、もう二度と私の目の前に現れないで!



随分と嫌われたもんだな。
もっと感謝してもらってもバチは当たらないはずなんだけどね。



どうしてあんたなんかに!



曽根原教授の研究室から
無事に逃げられたのは誰のおかげだと思ってるんだ?

あのバスケット部員の三人だって俺が代わりに始末してやったんだぜ。



そんな事、頼んだ覚えは無いわ。

やめてよ!



変身人間の研究を曽根原教授の娘が受け継いでしている。
そんな情報を耳に入れてから俺はずっと彼女をマークしていた。
そしたらおまえと出くわしたんだ。

お互いはじめて出会った同族が異性だった事は神に感謝すべきだな。



近寄らないで!



おまえの事は俺が一番よくわかってる。
まぁ、仲良くやろうじゃないか。



やめてよ!

あたし、あなたと同じ種類の人間だなんて思ってないから。






あいつが変身人間?

見たのか?

じゃぁ、どうして?



目が・・・
目が紫色に光ったの。






やだ。



どうして?
だめだよ。

だって・・・






でも、どうしてそれが変身人間だって。



わかるの。

変身人間同士なら、何となく。

昨夜ね、あたし・・・



キャー!



あの男よ。



居るんだろ?おい!
姿、見せろよ!



ぁ!



やめてよ。
どうしてこんな事しなくちゃいけないの?



危ない!



あーっ。



慎ちゃん!



大丈夫さ、これくらい。



血が・・・



倫子?

倫子。



慎ちゃん。



どうだったかな?
これで俺がおまえの仲間だってことがわかっただろ?



そのために、あの二人を?



ちょっと目障りだったしな。



ひどすぎる。
そんな事で、罪の無い人を。



俺たちの血の半分は獣だ。
獣が罪のある無しを見分けて獲物を殺したりするか?



あたしは・・・人間よ。



おまえ、いったい何が目的なんだよ!



ふっ。
まだ聞いてないのか?
彼女が欲しいって言ったんだ。
プロポーズしたんだよ。
そして、倫子は俺のものになった。



嘘よ。
でたらめ言わないで!



まったくの でたらめかな?



倫子。



キスされただけよ。



てめぇ!



慎ちゃん!



三日だけ待ってやる。
おまえが素直に俺のものになるか?
それとも力ずくで俺のものになるか?
ふっ。
まぁ、どっちにしても結果は同じだ。
考える必要ないはずなんだけどな。



くっそぉ。

なさけねぇよ。
俺には何も出来ないよ。



慎ちゃん。






ただいま。



倫子。

お帰り。



慎ちゃんと一緒だった。
今度は嘘じゃないから。



じゃぁ、前は誰と一緒だったんだ?

倫子。
パパはな、別におまえの恋愛にとやかく言うつもりじゃないんだ。



わかってる。
おやすみなさい。



倫子。






まぁ、見てろって。
穂久闘だ?
穂久闘なんかな、ダブルスコアで負かしてやるよ。



裕介くん、バスケ頑張らないと大学あがれないかもしれないもんねぇ。



うるさいなぁ。
ショック。



でもさぁ、穂久闘って去年、決勝まで残ってんだぞ。
勝てんの?



大丈夫だって。
今年、女子が調子いいんだから。
な、倫子。



え?
ぁ。



おはよう。



慎也、おまえ、これ。



いや、大した事ないんだ。






ん?

ん?なに?

練習やるぞ。
お、おう。



水島先輩、どうしたんですか?



不良にからまれた倫子、助けたんだって。



やっぱ無理だよ。
練習、休めって。



まだ三日ある。
それまでには治るさ。



そうだけど。



大丈夫だって。



慎ちゃん。



ごめんね、あたしのせいで。



倫子が謝る事ないさ。



でも、大切な試合なのに。
三年間の練習の成果を見せる一番の試合なのに。



いいって。
別にバスケが出来なくなった訳じゃないから。

それより、あいつの言うことは絶対に聞くな。



慎ちゃん。



あんな男にはおまえを絶対渡さないから。






情けねぇよ。






先 行ってて。



いや、潮干狩りとか行かない?



いつまでも傷ついた乙女やってんじゃねぇぞ。



由佳ってほんと口悪いよね。



倫子らしくないよ。



わかってる。



だったら、こんなとこで青春映画やってないでさ
次の試合の事でも考えれば?



ぇ?



あんたの頑張ってる姿、慎ちゃんに見せんのよ。



うん。



慎ちゃんってさ好きなだけでバスケやってんじゃないのかもよ。



え?



やっぱ、聞いてないんだ。



何を?



慎ちゃんがバスケ始めたきっかけ。



きっかけ?



慎ちゃんって小学校の時サッカーチーム入ってたんでしょ?



うん。



だけど倫子のパパが大学までずーっとバスケやってた。



そう言えば、ちっちゃい頃よく
公園でパパや慎ちゃんたちとバスケットボールで遊んでた。



そんときね、あんたのパパから言われたんだって。
うちの娘と付き合うやつはな
絶対にバスケをやってるやつじゃなきゃ駄目だって。



パパがそんな事を?



男ってなーんて単純なんだろうね。



知らなかった。



恥ずかしくて本人には言えないか、やっぱ。



でも、ちょっと嬉しい。



あんたもチョー単純。






よぉ。



あ、今 お茶 入れますから。



いいよ、いいよ。
そんな気ぃつかうな。

よし。
お!
おじさんのために買っといてくれたのか?



あ。



親父さんから連絡あるか?



えぇ、お袋のほうから週末には必ず。



そうか。

しかし、大変だよな。
いきなり初めての国で特派員ってのも。



そうみたいです。



なんだ、この部屋、思ったより狭いな。



どうぞ、これ。

倫子さんの事ですよね。



他に何がある?



倫子はな、最近、よく
家を空けるんだよ。
訳を聞いても、嘘をついて何も話してくれないんだ。
倫子がどこで何をやっているのか
慎也君は知ってるのか?
どうなんだ?



知りません。



ほんとか?



僕にもわからないんです。



しかし、親父ってのも情けないもんだよな。
自分の娘が何を考えているのか、全然わからん。
なんか、倫子がだんだん遠くに行ってしまうような気がしてな。



あいつの事、信じてやってください。



ふっ。
生意気言うな。

バスケットは上手くなったか?



少しは。



大学でもずっと続けるのか?



ま、そのつもりです。



そうか。



倫子のこと、頼むぞ。






緑川さん。



いい気なもんね。
先輩がひとりで苦しんでいる時に。
どこで道草食ってたんですか?

水島先輩も何も教えてくれないんですよ。
変身人間って何ですか?

物騒な事件とやっぱり何か関係あるんですか?



さぁ。



紫の目だとか、何だとか。
わかんない事だらけ。
なんか、全部誰かさんが関係している気がして。



何が言いたいの?



倫子先輩、危険な香りがする。
どんどん、どんどん慎也さんを不幸にしていくみたい。
慎也さんを苦しめているのが何なのか
あたし、絶対に突き止めてみせますから。






三日だけ待ってやる。
おまえが素直に俺のものになるか
それとも力ずくで俺のものになるか。



倫子先輩って危険な香りがする。
どんどん、どんどん慎也さんを不幸にしていくみたい。






どうしろって言うのよ。






居ないねぇ。



うん、練習には出るって言ってたのに。



お、慎也帰っちゃったみたいだな。
どこ探しても居ないよ。
ヤケなんか起こしていないといいけどな。



そんなやつじゃないでしょ。



そりゃそうだけどさ。



お姉ちゃん。
慎也さん、練習でてる?



帰っちゃったみたい。



そうっか。



どうかした?



慎也さんね、平田先生から誰かの名刺
預かっていたみたいよ。
えっと、ジャーナリストの・・・



田切・・・



そう、小田切さん。






あんな男におまえを絶対 渡さないから。






まさか・・・






何の用かな?



話がある。



入れよ。



悪いが食事中だ。
少し待ってくれるか。



これ以上、倫子に近づかないでくれ。



飲むかい?



結構だ。



倫子には半分、獣の血が流れているかもしれない。
でも、あいつは
ずっと普通の人間であり続けたい。
そう思っているんだ。

おまえみたいな獣と一緒にするな。



彼女と結婚でもする気か?



だったらどうした?



やめとけ。
悪い事は言わない。
彼女にとって何が必要で、何が危険か。
一番よくわかっているのは、この俺だ。
坊やの出る幕じゃないんだよ。



俺はなぁ、10年以上前から倫子を知っているんだよ。



見てみろ。

これはこの間撮った彼女の写真だ。
そっちの壁に貼ってあるのは
1ヶ月前、彼女が初めて変身した頃の物だ。

どうだ?
こっちのほうがはるかに美しいだろ?
血の味を覚えて彼女はどんどんとセクシーな女になっていっている。



ふざけるなよ。



そう言いたいのは俺のほうだ。

一度変身すると血の匂いにやたら敏感になる。
ちょっとした物音で目が覚めるし
わずかな香りだって頭痛がするほど強烈に匂う。
明かり一つ無くたって見たくないものまでよく見えるし
それに、一度人間の味を覚えると
始末に追えなくなっちまうんだよ。

おまえは俺たちの哀しみの半分もわかっちゃいない。



頼む。
倫子をそっとしてやってくれ。



無理だな。



おまえに俺が殺せるかな?



やってやるよ。



やめて!



倫子。

倫子、逃げるんだ!
早く!



許さない!
これ以上、慎ちゃんを傷つけたら絶対に許さない!



おい、やめろ!
変身なんかするな!



慎ちゃん!



やめろ・・・
俺がたとえ殺されたとしても・・・
豹にはなるな。
おまえは・・・
人間・・・なんだ。



だめよ、慎ちゃん。
抑えきれない!
身体の奥で怒りが何かに変わっていく。



倫子!



倫子。



やめろ!

やめてくれ!

倫子!



言ったろ。
俺が殺されても変身するなって。



やれよ。
殺したいなら殺せばいいだろ?

俺には・・・
俺が倫子にしてやれる事は、これくらいしか無いんだからよ!

倫子。

倫子。



情けねぇよ。
俺は倫子に助けられてばっかりだ。



さっきは助けてくれたじゃない。



たまたまだよ。

あいつにも半分人間の心が残ってた。



慎ちゃん。



ん?



慎ちゃんがあたしの傍に居てくれれば
それでいいの。



倫子。



あ!せみ。



どこ?



ほら、殻から出て樹を上ってく。



俺には見えないよ。



そうか。



おまえのその紫の目
まったく気にならないと言ったら嘘になるけど
俺は綺麗だと思う。



慎ちゃん。






面白いじゃない。
面白すぎるわ。
もう一人変身人間が居たなんて。
サンプルが多いほうがデータの信用性も増すものよ。