闇のパープルアイ 第2話。

闇のパープルアイ 第2話。


第2話。
檻の中の豹少女!



闇のパープルアイ 第2話




先生、違います。
私はただの人間です。



獣に変身したあなたを。



イヤー。



変わりなさい。
本性をあらわすのよ。

あなたの中に眠っている獰猛なけだものの血をあらわすのよ。



曽根原先生と何があった?



お願い。
もうこれ以上、何も聞かないで。



*******



ねぇ、ねぇ。
ニュース見た?



見た、見た。
豹が街の中を走ったんだって?



俺も見たかったよな。
豹。



ぇえ?
でも、チョー危ないじゃ。



この事件とやっぱ関係あるんかな?



あれは、狼男の仕業だって。



だよね。



私は豹なんかじゃない。
私は人間よ。



よう。



おはよう。



ごめんね。
何も話せなくて。



ま、いいよ。
話したくなったらで。



慎ちゃん。



倫子にとっての俺ってさ
所詮その程度のものだったのかな。



慎ちゃん。



尾崎さん。
昨夜の事、誰かに話した?
話せるわけ無いわよね。
あなたのした事、考えると。
あなた、普通の人間じゃないんだから
あたしの所に戻ってくるしかないんじゃない?



あたしは、先生の思い通りになんかならないわ。



あなたはまた必ず変身するわ。
あなたの意思とは関係なくね。






おい、なんだ、見学かよ。



あぁ、ちょっと怪我しちゃってな。



ふーん。
まぁ、ゆっくり見学・・・って言うか
見物って言うか・・・楽しんで。



まった、身体ばっか大人になっちゃってぇ。



何、急に親父になってんのよ。



だいたい水泳の授業なんてさ
男子の夜のおかずになるだけじゃないとおもわない。



あー、思う、思う。
ちなみに私は、フレンチのオードブルかなぁ。



あんたは刺身のツマ。



あー、ひっどい。



どうしたんだろう?
水が・・・
水が、怖い。



倫子!



大丈夫かよ、おい。



大丈夫?



倫子。
大丈夫か?



私に触らないで!





あれは、まずかったよねぇ。
せっかく助けてくれたのにさ。
あたしに触らないで。
あれは まずかったでしょ。
慎ちゃんと何かあった?



別になんも無いわよ。



あー、犯されそうになっちゃったとか。



あんた達じゃないんだから。
先に練習行ってるね。



何よ!
人がせっかく心配してあげてんのに!






曽根原先生、そんな事言わずにお願いしますよ。



ほんとに、まだ授業の事で精一杯ですから。



大丈夫ですよ。
顧問って言ったってたまに顔見せていれば良いんですし。



尾崎さん。



尾崎、ちょうどいい所に来てくれたな。
お前からも頼んでくれよ。
今、曽根原先生に女子の顧問をお願いしているんだ。



失礼します。



おい。
尾崎・・・



生徒も望んでないみたいですね。



曽根原先生。

はぁ。
華麗なジャンプシュートをお見せしたいんだけどな。






おはようござまーす。



よう、ご苦労さん。
今日はどうだ?



いえ、私が一番の新入りですから。



手伝おうか?



いいですよ。
キャプテンにそんな事まで。



別にキャプテンって言ったって、名前だけだしさ。



優しいんですね。
先輩って。



そうかな?



あたし、本当はバスケなんかするつもりなかったんです。
でも、先輩が夢中でボールを追っているのを見て
つい、ふらふらって。



バスケ、好きになった?



好きになりました。
先輩が。
言っちゃった。
でも、先輩には倫子先輩が居ますからね。



居るんだか、どうだか。



え?



いや、別に・・・



どうしたんですか?



怪我したんですか?



いや、別に、大した事ないんだ。
ほら。



でも・・・
熱もっているみたい。

あたしって・・・
そんなに魅力無いかな?



おい、緑川。



慎ちゃん。



倫子!



もう、嫌だ。
こんな身体。

こんな身体。

変身してしまったらコントロールがきかない。
きっとまた人を殺してしまうんだわ。

だったら、いっそのこと・・・
そうよ、こんな身体・・・無くなった方が・・・



やっぱり死にたくなった?
でも、そこから飛び降りたとしても
死ねるかどうか、わからないわよ。



え?



動物はね、危険が迫ろうとすると
本能的に自分の身を守ろうとするの。
あなたがそこから飛び降りたとしたら
あなたの中の獣の血はどう反応するかしらね。



先生。



おそらく、あなたはまた
豹に変身する。
自分の身を守るためにね。
どう?
実験してみる?

でも、もし豹に変身したとしたら
人の目にもそれを見せる事になるわね。



そんな・・・



言ったでしょ?
あなたはあたしの所へ戻ってくるしか生きる道は無いのよ。
あなたの事を誰よりも大切に思っているのは
このあたしなの。
さぁ、おいで。
あたしの可愛いモルモットちゃん。

待ちなさい!
あたしならあなたの変身を止めることだってきっと可能よ。
あなたが戻ってくればね。






おお!
今夜はステーキか。



あったり!
ママ直伝の特製ステーキソース。



そう言えばママも好きだったよな。



いくらママが好きだったからといって
家中ゼラニウムだらけにしないでよ。
意外と匂い強いんだから。



いいじゃないか。
ママが残してくれた一番美しい形見なんだから。



あー。
あたし達は?



あ?
お前らはそりゃ、一番可愛い忘れ形見だから。



なんか、無理してるみたい。



馬鹿言え。
よし、いただきまーす。



いただきまーす。



お姉ちゃん。



もうちょっと焼いてくれないかな。



え?

ごめん。
気がつかなかった。



倫子はよく焼いたやつのほうが好きだったんじゃないか?



うん。

味覚まで変わっちゃったんだ。






身体の中までどんどん変わっていってる。
変身を止める方法。
曽根原先生は本当にそれを知っているって言うの?






こんばんは。
曽根原先生。
先生のわりには随分と物分りが悪い。



随分としつこいのね。
あんたが言う事を聞いてくれれば、もう現れたりはしないさ。



どうして私があなたのいう事を聞かなければいけないのかしら?



今すぐ学校をやめるんだ。
そして二度と尾崎倫子の前に現れるな。
これが最後の警告だ。
これを見てじっくりと考えるんだな。



あんなチンピラに何が出来るって言うのよ。



大学教授焼身自殺図る。
曽根原氏 自宅庭で転任苦に

曽根原 重治氏






えー、今日の欠席者は?



尾崎さんが風邪で休んでまーす。



そう。

じゃぁ、今日の実験を始めてください。



おい、どうした?
ん?



相談 のってやろうか?



何が?



緑川の事でよっぽどひどい喧嘩でもしたか?



そんなんじゃねぇよ。



珍しいよね。
倫子が休むのって。



いろいろあるみたいよぉ。



ふーん。
そうなんだ。



卵白のたんぱく質を分解する場合
酵素を使わないと硫酸などの強い酸を大量に加えて
何時間も煮沸しなければいけません。
しかし、豚の胃液から取った酵素・・・



もし変身を止める方法があるのなら
きっとここに何か・・・



ようこそ。尾崎さん。
きっと来てくれると思ってたわ。
声をあげてもいいのよ。
あなたが何のためにここに来たのか
みんなに知られてもいいのなら。



先生、何の音でした?



何でもないわ。
実験を続けて。



はーい。



この罠を・・・罠をはずして。






そう言えば、朝から調子悪いって言ってたけど。



そっか。



お姉ちゃんとなんかあった?



いや、大した事じゃないんだ。



ほんとに?



今日、家に寄ってみるわ。



慎一さん。



あ?



女が弱っている時って狙い目だよ。



馬鹿。






どうして私が尾崎さんの居場所を知っているのよ。



いや、先生なら何か知っているんじゃないかな?
と思って。



先生も暇じゃないの。
もういいでしょ?

あぁ、ちょっと薬品をこぼしたのよ。

何するのよ。
やめなさい、水島君。

やめなさい!

だから言ったでしょ?
あたしを疑っているとしたら見当違いよ。



失礼しました。



惜しかったわね。坊や。






実験の前に食事をさせてあげるわ。
こんな物がかえって口に合うようになったんじゃない?



先生、傷口にロープが。
お願い。言うことききますから。



少しだけ緩めてあげるわ。



待ちなさい!
あなたに逃げ場は無いのよ。



誰か!
誰か助けて!

誰か!



助けてください!



どうしました?



とりあえず、この縄をほどいてください。






先生。



いい眺めね。
こうやってあなたをじっくりと観察できる日を
どれほど夢に見たことか。
これで父を狂人扱いした学会を見返してやれるわ。
ね、岩見沢



はい。



あなたまで。



父のコネで大学の授業やってたのを高校に移ってもらったの。
あたしの言うことだったら何だって聞いてくれるわ。



あたしをどうする気?



決まってるじゃない。
生体実験よ。
今度こそこの目であなたが変身する姿をじっくりと確かめさせてもらうわ。
さて、まずはどんな方法で可愛がってあげようかしらね。

まずは電気ショックで変身が誘発できるかやってみましょうね。



ひ、ひどい!

イヤー!



電圧を上げてみましょうか?



イヤー!



気を失っちゃった。
まぁいいわ。
先に血液採取しておきましょう。

逆らわないほうが身のためよ。子猫ちゃん。



実験その2。
あなたが望むようにこっから飛び降りてもらいましょうか。



え?



あなたは自分の身を守るために必ず変身する。
それが私が立てた仮説よ。
さぁ、それを証明してもらいましょうか。



もうやめて。



今さら怖がるの?
大丈夫よ。
あなたをみすみす殺したりしないわ。



あ、あ、いやー。



変身して頂戴。



豹よ。
豹に変わった!



岩見沢

あなたのおかげで貴重なデータがとれたわ。
ありがとう。






また一人殺してしまった。
助けて。
誰でもいい。
変身しないですむ方法を、あたしに教えて。






へぇ〜。
あの守衛のおじさんが?



吉岡君たちの時と同じ殺され方だって。
また猛獣の仕業?



うそぉ。
こわーい。



へぇ〜。
そんなのが走ってたんだ。



うん、結構大きかったんだ。



やっぱこいつの仕業か?



狼男だと思ったんだけどな。



もう、いいっつうの。
そんな。



よう。
倫子は?



まだみたい。



尾崎の所 行ったんだろ?
どうだった?



ん。
うん、ちょっと会えなくてな。



普通じゃないよ。
二日も休むなんて。



わかってるさ。






ご協力、ありがとうございました。



いいえ。



どうしたの?
そんなに怖い顔して。



今日も倫子は休んでいます。
教えてください。
先生と倫子に何があったんですか?



蛙ってさぁ、おたまじゃくしと身体の形は全然違うのに
なんでこんなに変わっちゃうんでしょうね。



話をそらさないで下さい。
教えてくれないのなら警察に行きますよ。
吉岡たちの事件の夜の事、先生の実験動物のこと
全部しゃべってやる。



そう。
そんなに知りたい?



当たり前じゃないですか。



あいつ、きっと俺にも言えない何かを
一人で抱え込んで悩んでいるんです。
なのに、俺 なんの力にもなってやれない。



彼女の事 本気で愛しているような事 言うのね。



本気です。



彼女にどんな秘密があっても?



秘密?



教えてあげようかなぁ。



どう?
覚悟はできた?



あ。



音を無くせば十分に刺激的よ。



もう一度 巻き戻して。



いいわよ。



うそだ。
そんな馬鹿な・・・



三人を殺したのも
昨夜の守衛殺しもみんな、あの獣の仕業よ。

どう?



これでもまだ、あの子を愛せる自信はある?
豹に変わる女を。
ねぇ、水島君。






倫子。
倫子、入るぞ。



パパ。



ほんとに病院行かなくて大丈夫か?



うん、少し眠ったらだいぶ楽になったから。



あぁ、パパ今日も徹夜になるけどいいかな?



大丈夫。気にしないで出かけて。



そうか。
なぁ、倫子。
ママがこれを育て始めたころの事、覚えているか?



確か、ママが具合が悪くなったころ。



そう、他に花はたくさんあるのに
どうしてゼラニウムにしたか
倫子、わかるか?



さぁ?



パパもわかんなかったんだけどな。
ちょっと気になって調べてみたんだ。
そしたらこの花、8月11日の誕生花だったんだ。



私の誕生日。



あぁ。
ゼラニウム花言葉は愛情。
だけど、赤いゼラニウムは決心っていう意味があるんだそうだ。



決心。



ママはこの花育てながらどんな決心をしてたんだろうな?






どんどん、変わっていくわね。



そんな事ないって。



いいのよ、倫子。
ママはね、戦っているの。
病気なんかに負けないわよ。



強いんだ。



倫子だってもっと、もっと強くなれるのよ。



大丈夫。
私は病気になんか・・・



病気じゃなくたって、生きていればいろんな問題にぶつかるでしょ。
そういう時こそいつも以上に強くなって
強くなって戦わなくちゃぁね。






倫子。



慎ちゃん。



降りて来いよ。
もう、何も聞かないよ。
お前を信じる。



ありがと。慎ちゃん。



なんだよ。

あぁ、うち寄ってくか?
お茶でもご馳走するよ。



うん。



はい。



なんで、慎ちゃんが持ってるの?



え?
これ、由佳が撮ったやつだろ。
谷口からまわしてもらったんだ。



なんだ。そっか。



うん。



あたし、慎ちゃんと出会えて良かった。

慎ちゃんのこと、好きになって良かった。



何、言ってんだよ。



あたしね、決めたんだ。



ん?



戦ってやる。
自分の運命と。

身体が・・・変・・・
しびれる・・・慎ちゃん・・・まさか・・・



上出来よ。水島君。



どうして?
どうしてよ。






出して!
ここから出して!



もう、薬 切れちゃったの?
タフな身体ね。



慎ちゃんは?
慎ちゃんに会わせて。



まだ彼の事、信じているの?
彼はあなたの事、裏切ったのよ。



嘘よ!
慎ちゃんはそんな人じゃない。
そんな事、絶対に無い!



アハハハハ。
それはあなたが人間の場合でしょ?



まさか。



自分で見るのは初めてでしょ。
あなたは人間じゃない。
獣の血を持つ生き物なのよ!



いやぁ!!!

慎ちゃん。



ほら、食えよ。
今度は何も入ってない。



嘘でしょ?
どうして慎ちゃんが?



それを言えって言うのか?
おまえは豹だ。
少なくてもその血の半分はな。
そして人を食い殺した。
そんな女を好きになれって言ったって俺にはそんな自信は無いよ。
許してくれ。倫子。



慎ちゃん。



先生はお前を殺したりしないさ。
きっと大切に・・・



出てって!
もう、二度と顔なんか見たくない。






まだまだデータは不十分だわ。
でも、世間を驚かせるにはこのテープ1本で十分よね。
そうだったわね。
手伝ってもらったお礼よ。

誰も豹なんかを恋人なんかにしたくないわ。
あなたは当然のことをした。
気にする事なんかないわ。



先生。
一つ聞いていいですか?



どうかした?



先生はどうして変身人間の研究なんか始めたんですか?



どうしてって?



この記事とは関係あるんですか?
そこのゴミ箱に入っていたんです。
それ、先生のお父さんの事ですよね。



そうよ。



亡くなったんですか?



父は死んだんじゃない。
殺されたのよ。
頭の固い学者連中にね。
たしかに父は研究にとりつかれていたわ。
人から見れば異常なほどにね。
でも、やつらは本当に父を異常者呼ばわりした。
おまけに地方の大学に転任させ事実上、教授の肩書きを奪ったの。
だから父は・・・






ギャァーー。



お父さん!

お父さん!

お父さん!
いや!






あの炎と共に変身人間の研究も闇に葬られた。
でも、私は忘れなかったわ。
いつか、きっと
こんな日が来ると信じてた。
あのアザを持つ人間に出会う日まで。






こんなに暗いのにはっきりと見える。
そうだわ。
豹の目なんだ。
愛した人はもう居ない。
そうよ。あたしはもう、人間で居る必要なんかないの。
許さない。
あたしをこんなにした曽根原先生を許さない。
いえ、私が許しても私の中の獣の血が絶対に許さない。






それでこのテープを学会に。



データが十分に揃ったらね。
そして次はテレビ局よ。
世界でたった1本のこのテープが世間をあっと言わせるのよ。
その日が来るのが楽しみね。

ちょっと待っててね。



やっぱりあなたね。



かなりのわからずやだね。あんたも。
俺も随分と舐められたもんだ。



そんな事ないわ。
あなたの事はちゃんと考えているわよ。
いらっしゃい。
中で小切手を切るわ。



金をよこせなんて俺は一度も行った覚えがない。



かっこつけなくてもいいのよ。
さぁ、どうぞ。



あんたは俺の警告を無視した。
これはレッドカードだ。

今までの写真、匿名で全部警察に送ったよ。
さて、警察はどう動いてくるかな?






なんて事なの?!
あんなチンピラに全てを潰されてたまるもんですか!

待って、尾崎さん。
あなたに危害は加えないわ。
おとなしくしてれば、あなたの言うことだって聞くわ。
ねぇ、尾崎さん。

おとなしくして。



やめろ!
やめてくれ、倫子。
頼む。これ以上人を殺さないでくれ。

よせ。

好きにしろ。
俺はお前を裏切ったんだ。
殺されても仕方ないよ。
倫子。



これで全てが終わると思ったら大間違いよ。



倫子!やめろ!

おまえの変身を撮ったテープだ。
この1本にしか変身は記録されていない。
これを取り戻すのが先だと思って、あんな事をしたんだ。
許してくれ。倫子。
元の姿に戻ってくれ。
な。俺と一緒に帰ろう。
倫子。好きだ。






これさえあれば、いつでもあたしの所に戻ってくるわよね。
尾崎さん。

あの坊やの事、甘く見すぎたわ。
これしきの事であきらめてたまるもんですか。
待ってなさいよ。尾崎さん。






ごめんな。



変身が止まった。
あんなに熱かった身体がだんだん冷えていく。

慎ちゃんまで巻き込んじゃってごめん。



そんな事、気にするなよ。



本当に、こんなあたしでいいの?



何 言ってんだよ。
俺、いつか言ったよな。
おまえがどんなに変わろうと
俺は倫子の事がずっと好きで居られるって。



慎ちゃん。



愛する彼の腕の中で
私はつかの間の安息を身体中で味わっていた。
でも、この先にもっと恐ろしい試練が待ち受けているのを
私はまだ、知らなかった。