灼眼のシャナII 19 1/3


言えなかったこと。




この街を出る。
そう決めて一心に鍛錬を続ける悠二の態度に
言いようの無い不自然さを覚えるシャナと吉田一美。
二人に激しい言葉をぶつけられ
戸惑う悠二の前にぐぜ(紅世)のともがら(従)が現れた。






わたくし、
名を聚散(しゅうさん)の丁(てい)、ザロービ
と申します。

おー、ほほほほほほ。



ぐぜ(紅世)のともがら(従)?

僕の感覚はかなり鋭くなっている。
なのに、なぜ、こんなに接近されるまで気づけなかった?」

そうか、
こいつの存在の規模が小さすぎるんだ。
これなら、シャナやカルメルサンたちも
気づけない。



そう怖い顔をなさいますな。



あなたに乱暴などいたしませんとも。



そう、あなたにはね。



僕にはって?
どういう意味だ?!



ほっほっほ。
あなた以外の人間には
そうではないと言う事です。



まさか・・・



この周囲にどれだけ人間がいるか
おわかりで?



おまえな!



お待ちなさい!

あたくしに危害を加えれば
あなたは必ず後悔いたしますぞ。



僕が、おまえたちを倒す前に・・・
向こうに隠れているもう一人が
街の人を襲う手はずだからか?



ぐ、ぐふぅ。
はー。

お察しのとおりわたくしに何かあれば
残った一人が周囲の人間を喰らう事になるでしょう。
はっはは。
反抗する事がいかに危険であるか
おわかり頂けましたかな?



誰にも悟られずに僕を狙ってきたって事は・・・



あんた、バルマスケ(仮装舞踏会)のイエーガー(捜索猟兵)って奴か?



うわぁっ!
それを?!
あっちゃー!



やっぱりそうか。

アウトロー(外界宿)の書類に何度も出てきた。
隠密行動専門で戦いには不向き。
単独行動はせず、戦闘専門のヴァンデラー(巡回士)
という種類のともがら(従)と作戦を遂行する。
だとしたら・・・

そのヴァンデラー(巡回士)がどこかに居るはずだ。
けど、そいつの気配は感じない。
自在法でも使っているのか?
こいつらの狙いが読みきれない。
様子を見るしかないか。



ご納得頂けましたかな?



わたくしの事もご存知なら
話が早くて助かります。



それでは、ご同行願いましょう。



ミステス、坂井悠二殿。



今朝から感じてた物は
この事だったのか?






ぁ。

どう?
ヴィルヘルミナの煎じ薬?



効きそうなお味ね。
カルメルさんは?



千草に薬膳作るって、張り切ってる。






うむむむむ。






一美も、これ
持ってきてくれた。



まぁ、
ありがとう
って伝えて。
もちろん、シャナちゃんもね。



うん。






どうして謝るんですか?



悠二は嘘ついてる。
私と一緒に行くのも
千草を心配するのも
全部、違う!
ほんとじゃない。
私、今の悠二とは一緒に行きたくない!






悠二・・・






ぁ。



よう。






どこに連れて行くつもりだ?



黙ってわたくしの導きに従っていただきたい。



もし、従わなければ?



おわかりでしょ?



こいつらの狙いはなんだ?
僕を誘拐したいだけなら
こんな面倒な事はしない。
真の目的は僕を餌に
シャナ達をおびき寄せる事か?

だとしたら、早く知らせなきゃ。
でも、どうやって?

ぁ。

わぁー!
わぁー!
わ、わぁー!!



何をしているのです!



わぁー!



お静かに。
気でもふれたのですか?



このまま付いて行ったら、
どうせみんなをひっかける大きな罠があるんだろ?!