灼眼のシャナII 18 1/3

灼眼のシャナII 18 1/3


錯綜の悠二。




清秋祭において繰り広げられた死闘の中
無残な緒方の姿を見た田中の中に恐れが生まれた。
彼はマージョリーに近づく事を躊躇する自分を恥じつつ
佐藤に決別を告げる。
長く一緒に居た二人は別々の道を歩き始めていた。






何処ですと?
たいそう電波の状態が悪いのですが
いかにわたくしの任務に先行偵察が含まれているとは言え
こうも度々期限間際の合流を繰り返されるようでは
作戦の連携にも不備が生じますぞ。

互いに参謀閣下、ベルペオル様の信頼を受ける身
ピフロンス殿にもそろそろ御自覚頂きたい。

な・・・

あー、やはり電波が・・・



電波の状態じゃない。



おー?
おー?
ぐほー!



携帯を切ったんだよ。
聚散(しゅうさん)の丁(てい)、ザロービ。



吼号呀(こうごうが)、ビフロンス殿。



いつもどおり、合流予定時刻は今だ。
斥候であるイエーガー(捜索猟兵)のおまえと違って
俺の気配は小さくない。
この隠れ蓑、タルンカッペへと、じっくり、力を注ぎながら
歩かなきゃ、ならん。



事情は了解しておりますが・・・



あせる必要は、あるまい。



あせってなどおりません。
ただ私どもには・・・
大命詩篇にかかわるミステスの奪取。
および、邪魔者の始末と言う
デリケートきわまる重要任務が課せられております。
慎重には慎重を期して。



ハハハハハハ。
安心しろ。
責任を持って皆殺しにしてやる。
ハハハハ。



安心できるか?
戦闘馬鹿のヴァンデラー(巡回士)はこれだから困る。



行くぞ。



はっ。
わかっております。






じゃぁ、今教えたとおりにやってみなさい。
あんたの身体を形作っている存在の力。
それを無意識に統御している意思相対の働きを感じて
支配下に置く。



悠二・・・






僕に自在師の適正が?



おそらく。



マージョリーさんみたいに自在法が使えるって事ですか?



存在の力の量だけは相当な物でありますから。



力を炎として打ち出す炎弾とか
習得しておいて損はない。
悠二は体術はまだまだだし・・・



封絶だけじゃなくて、戦いにも?



ただし優秀な自在師の指導を受けねばなるまい。
自身の存在の力を使う以上
適正や力の加減などを見誤っては悲惨な結果になろうからな。



弔詞の詠み手ならぴったりだけど・・・



この手の事に協力するとは思えぬな。



カルメルさんから、頼んでもらえませんか?
僕、自在法での戦いも出来るようになりたいんです。



しかし・・・



お願いします!



ぁ。



それに、僕が使うのは銀の力って事になりますよね。
マージョリーさんも傍で監視してたいんじゃありませんか?



ぁ。






で、あんたの存在の端からこぼれてくる
ほんのちょっとの力を自分の手に集める。

馬鹿、ちょっと・・・
そんなに集めたら、あんた丸焼きよ。
今集めたもんの鼻先つまむ程度でいいの。

そう、それを炎のイメージで手のひらに具現化する。



ぁ。



おいおい、きなくせぇぜ、相棒。
教える振りしてぶっ壊すなよ。



ふん。
そんな意味のないことしてどうすんのよ。
ようやく目の前に現れた手がかりじゃない。

悠二!
その炎を切り離して!
あれに、ぶつけんのよ!



え?
切り離すって?



切り離してぶつけんのよ!
早く!



はい。

炎を切り離して、あの的へ・・・

やった!

うわぁっ!



悠二!



あの程度の火傷で死ぬ事はないのであります。



ぁ。



全力でやらないから手元に力が残っちゃうんでしょ。
出した力は全部ぶつけなさい。



はい。



炎を出してぶつけるまで、5秒切れるところまでやりなさい。



悠二、この間から物凄く鍛錬に熱心になった。



良い傾向であります。



重畳。(ちょうじょう)



ふふん。
我が相棒の
ぶん殴るみてぇな言葉にもくじけねぇでついてくる根性は
意外つーが。



あれなりに、己の立場を自覚し覚悟したと言うことであろう。



覚悟、ね。
どっちかって言えば
憑き物でも憑いたって感じだけど。



ぁ。



やった。

マージョリーさん!
出来ました!



ふん。
最初にしてはまぁまぁね。



次、
次、お願いします。



はぁ?



もっと大きな的も攻撃できる炎弾を作るには
どうすればいいですか?



悠二。



ともがら(従)に少しはダメージを与えられるくらいの・・・