×××Holic 17 1/3

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第十七話。
「ジショウ」



今あなたが、やろうとしている事
やめておきなさい。

それとも塗絵さん
あなたに対しては、こう言った方がいいのかしら?

やれるものなら、やってごらんなさい。






なんじゃ、こりゃぁ?!



伊達メガネ。
侑子。



ふん!



何でおれが伊達メガネなんか
調達して来なきゃならないんだよ?

それもコインロッカーに置手紙でかよ?!

伊達メガネが欲しいんなら
昨日、バイトの時に鍵なんか渡さずに
口で言ってくれれば
こんな家の近所でも、学校の近くでもない所に
来なくて済んだのに!

このメガネが何になるんだよ?
かけるのか?
侑子さんが?

それともおれ?
って、ダブルメガネになっちゃうじゃんかよ!



う・・・



はぁ。



100yen ★ Shop。



あったよ!
じゃぁ、なるべく安っぽく見えないやつで・・・
って100円じゃ限界があるな。

色は何となく・・・

赤。



ありがとうございました!



さて、買ったけど
この後、どうすりゃいいんだ?



ぁ!






櫛田塗絵






はぁ。
またやった。



どうぞ。



ぁ?



あの・・・
四月一日と言います。



あなたが救急車を呼んで
一緒に乗ってくれた・・・



あぁ!
寝ててください!



腕の骨に少しひびが入っただけだから。



ぶつかったのが、原付だったから
トラックとかだったら本当に危なかったですよ。

ぁ・・・

これ・・・
お見舞いに。

ぁ・・・






なるほど。

それが、昨日
勝手に休んで
今日もバイトに遅刻した理由というわけ。

大変だったのねぇ。



侑子さんにねぎらわれると
なんか怖いんですけど。



うふふ。



その笑顔がさらに怖いっす。

で、なんに使うんすか?
そのメガネ?



さぁね・・・

で、どうだったの?



え?



お見舞い。
行ったんでしょ?



気になるんですか?
侑子さん?



四月一日が言ったんじゃない。
その人の肩に何か見えたって。



いや、ひょっとしたら
ショルダーバックの金具とかかも知れないんですけど。



でも、そう思ってはいないんでしょ?

花の香りがする。



ぁ!

これは・・・その・・・
持って行った花束を、彼女
塗絵さんからぶつけられまして。



あら、あら。
何か気に触る事でも言ったの?

この病院って・・・
創立以来、退院した人が一人も居ないらしいですね?
なーんて、冗談を言っちゃったとか?



そんな微妙なブラックジョーク言ってません!

つか、本当に突然
花束投げつけられたんですよ!



どうして?



それが、理由は無いらしいんですよね。
実際、渡した花束をぶつけられた後
彼女
平謝りでしたし・・・
こんな事しちゃいけなかったのに・・・とか。

話を聞いてみると、あの人
昔からそうらしいんですよ。

絶対にやってはいけない事をやらかしてしまうらしくて
例えば、絶対に押してはいけないボタンは
絶対に押すし
非常ベル鳴らすのもしょっちゅうで。

あ!
受験の時もね
絶対に合格できるって言われてた高校の入試日に
わざと風邪をひくようにして、受けなかったり・・・

大学の第一志望の試験の時は
名前、書かなかったそうですよ。

どっちも結局、第二志望の所へ行くことになったって。



今回は?



昇進がかかった会社の大事な
プレゼンテーションの前日だったそうです。

本人は、破滅願望とは違うって言ってましたけど。
おれから見たら、やっぱそんな感じで。
なんか、自分で自分の人生を
わざと台無しにしている感じなんですよ。

人間をそんなふうにしてしまうアヤカシって
居るんですか?



居るわ。



やっぱし!



でもね・・・
そうだとしても・・・



侑子さん・・・



ねぇ、四月一日



ぁ、はい。



幸せを当たり前に受け取れない人間の気持ちって
理解できる?



は?



例えば、宝くじで3億円を当てて
それを換金しない人間の気持ちが
四月一日には理解できるかしら?



いやぁ、出来ないですけど。

だって、それって侑子さんがよく言う
正当なる対価ってやつじゃないんですか?



そう。
つまり換金する四月一日
幸せを受け入れる事が出来るという事。



幸せ?